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フォーリング・ダウンのKtoのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
3.8

ロサンゼルスの暑さ, 蝿, おばさんの口紅, 子供の騒ぎ声, 渋滞…フラストレーションが限界に達したフォスターは「うちに帰る」と素っ頓狂な発言をし, 車を放置したまま歩き出す.

"これはストレスを溜めた中年男の怒りが爆発するブラックコメディ?"

と思ったのも束の間,

続々と出てくるフォスターの道を阻む者達が, 当時の(恐らく, 現在も続く)アメリカの経済・政治状況を象徴した存在になっていることに気がつく.

Korean Grocery(に対する差別), メキシコ系(?)(スペイン語話者)が多く住む治安の悪い地区のギャング, "何も壊れていない"道の工事, 3分過ぎただけでモーニングを提供しないファストフード屋, ヒトラーを崇拝するAnti-diversity主義者, 莫大な土地を個人のゴルフ場として所有する富裕層, 金網に有刺鉄線をはりめぐらせる整形外科医.

フォスター自身は軍需防衛産業をクビになり, 妻子と離れて暮らしていた苦悩の男性だった.

前半は"アメリカンサイコ"や"ノーカントリー"の様な, 狂った男が奔走するブラックコメディでもあり, 中盤はロサンゼルスを舞台にして政治・経済状況を語った"クラッシュ"の様でもあり...。

正義とも悪者ともとれない描き方をされているため, 最後はなんとも不思議な気持ちになる.
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