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われらの恋に雨が降るのpikaのレビュー・感想・評価

われらの恋に雨が降る(1946年製作の映画)
4.5
夜のシーンばかりなのに画質が悪すぎて何をやっているのサッパリ分からないんだけどこの面白さは一体何なのでしょうか!
顔の識別もなかなか難儀なもので爺さんがやたら多いし誰が誰やら、何度も見て理解するべきところだけど「なんとなく」でこの感動は異常。マジで面白い。傑作!

ベルイマンはいつから第四の壁を破ってんだか、さすが本職は舞台演出家だなぁと実感する冒頭のじいちゃんのシークエンスから傑作の匂いしかしないし、幕間のように絵でチャプターを分けるセンスの良さも魅力的。

過ちを犯した若い男女が雨の夜、手持ちの金も尽き行くあても定まらぬまま出会い、衝動的に一夜を共にする。
何もない二人が共通していたのは「新しい生活を始めたい」ということだった。

他人の人生には「興味がない」人々の集合体である社会は、騙し騙され正直者がバカを見る世の中であり、知識や社会性は常識として存在し、自分だけが可愛くて、他人に差し伸べる助けの手などない世界。
過ちも失敗も受け入れ、支え合い、ささやかながらも社会の中で責任を持って生き抜こうとする若者たちの生き様に心を打たれる。
観客の思いを汲むじいさんの演説は多少プロパガンダ的な面もあるけど、60年前の作品ながらも現代でも通じる普遍的で大切なことであり、他者と生きていくこの世界で大切なこととは何かと改めて気付かされ、胸が熱くなった。
ラストシーンの美しさはファンタジックだけれども、人生というものはこうあるべき美しさに溢れた素晴らしいエンディングだった。
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