アラサーちゃん

小さな泥棒のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

小さな泥棒(1988年製作の映画)
3.5
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「小さな泥棒」
母に捨てられ、貧しく粗暴な叔父夫婦と暮らす16歳のジュニーヌは、精神的不安から万引きを繰り返していた。それが叔父にばれ、彼女は家を出て使用人として働きはじめる。やがて年上のミシェルという紳士と不倫の恋に落ちた彼女は、少しずつ心の安定を取り戻していく。こうして彼女の悪癖は姿を消したように見えたが、ある日、空き巣をしているラウールという青年に出会い、彼女の運命がまた思わぬ方向へ動きだす。1988年、仏。

シャルロット・ゲンズブールの魅力をもってして観られる映画だと思います。ザ・フランス映画。つまらない人にはつまらない。

それにしても当時17歳のゲンズブールがとにかく無垢に可愛らしく、それでいて退廃的な魅力を醸し出していて、まあ存在感がものすごいです。これが演じるべき、少女と大人の中間点である16歳なんですね。
写真でわかるように、ほんとにまだあどけない。だけどグッとアダルトな雰囲気も持ち合わせていて、なんというのか、危険です。子どもみたいなことを言ったと思えば大人顔負けの怖臭いセリフ言ったり。ミシェルの言った「君は#ノートルダムの鐘に出てくるジプシー娘のエスメラルダ」という喩えが、すべてを物語っているのかなと思う。

前半はこの歳特有の感覚にイラッとさせられましたが、後半のラウールが出てきてからの物語の進み具合は面白くって、目が離せなかった。少女から大人へと階段を登っていく、その過程がとてもみずみずしく描かれていた。大人への憧れを恋と思い込んでいたり、初めての恋に戸惑ったり、自分自身が深層で何を求めているのか気づけなかったり。

こういうテイストの物語にしては、ラスト綺麗にまとまりすぎている気もするけれど(アメリカン・ニューシネマ並の救われなさを期待してた)

たとえばオゾンの「17歳」と比較しても面白いのかなと。現代と30年前の少女像は異なるけれど、芯にあるものは同じな気がする。彼女は彼女でジュニーヌと違い、裕福であるがゆえの精神的な不安を抱えていたんですけどね。でもこの年頃ってとてもグラグラしているのだと思う。

伯父さんの、財布を出すシーンがとても目に焼き付いて離れない。