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硝子のジョニー 野獣のように見えての3104のレビュー・感想・評価

3.8
ヒット曲『硝子のジョニー』の歌詞を基に作られた一品。歌っていたアイ・ジョージも出演している。

北海道の寒村に住む少女みふねが主人公。彼女は父と生き別れ、貧しさゆえ「人買い」に売られていく。やがて人買いから逃げ出した先で競輪の予想屋のジョーに出会う・・。

常に誰かと別れ、捨てられることに恐怖を覚えるみふねは、自分を不幸な境遇から救い出してくれる誰かを夢見ている。
それは宍戸錠演じる一本がきのジョーであったり、アイ・ジョージ演じる人買いの秋本であったりする。
彼女はその存在を「ジョニー」と呼ぶ。曰くジョニーとはかつて浜辺で出会い、その後波間に消えた詩人らしい。みふねはもう戻ってこないジョニーを思い、彼が教えてくれた歌『硝子のジョニー』を口ずさむ。

既に詩人はいない。すなわち物語の最初から「欠損」を抱えたまま。この欠損はジョーに会っても秋本と心を通わせてもそれは埋まることはない。彼女は出会った男たちに終始「捨てないで、行かないで」と繰り返す。その叶わぬ願いが終始痛々しい。

前半~中盤までは緊張感と時おりユーモアを保ったまま進む。が残念ながら後半は失速。終わりどころを見失いながら話が続く感じ。途中でエンドマークを打つチャンスがいくつかあったのに、という印象。

ジョーの演技もアイ・ジョージの歌声(本職だもの)もいいが、何といっても知恵遅れのみふね役の芦川いづみの存在感に尽きる。他の多くの作品で観られる清楚な役やスマートな役とはある意味正反対の役を、泥だらけになりながら懸命に、そして純粋に哀れにそれでいてキュート~の合間にかすかに色っぽさ、艶めかしさを湛えながら~に演じ切っている。
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