榊ニル

パワーパフ ガールズ ムービーの榊ニルのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

幼少期から何度も見返しているが、
全く見飽きる事がない名作。

己のスーパーパワーをやりたいままに振りかざしてしまったガールズが、市民からの迫害、悪に利用されてしまう悲劇を経て、力の正しい使い方を知り、ヒーローとして目覚める物語として綺麗に纏まっている。

人生ベストヴィランであるモジョ・ジョジョも、年を取れば取るほどに味わい深いキャラクターに見えてくる。
特に印象的なのが、ガールズを唆すシーン。
「お前たちは俺と違って、恵まれているから良いよな(要約)」と、自分自身をとことん卑下し、ガールズを持ち上げることで、彼女達自身に「私達はそんな恵まれた存在じゃない」と自己否定をさせて尊厳を損なわせる。
その後「俺達は凡人に理解されない者だからこそ、世界をより良く変えられる」と、優しく手を差し伸べたかの様に見せて懐柔させるという作戦。無垢な少女達を悪の道に誘う、人(猿だけども)として最低最悪の行為だ。悪役として完璧だ。

ヒーロー物の鉄板である、「正義と悪は表裏一体の法則」に則っているのも素晴らしい。
ガールズが生まれたきっかけはユートニウム博士なものの、パワーパフなガールズが生まれた直接的な原因はモジョにある。
この時点で、ガールズとモジョが戦い続けなければいけない事が宿命付けられているわけだ。まぁテレビシリーズはコメディアニメのため、そこまで正義と悪として対立している感はないが、本作というバックボーンがあるだけで、より深みが増す。博士本人は、自身がかつてペットとして飼っていた猿=モジョ・ジョジョである事を知らないのもエモい(いざそれを打ち明ける回はギャグで流されちゃってたけど)。

ただこれきっかけでパワーパフガールズに
興味を持った人にテレビシリーズはオススメ出来ないかな。前述の通り、本編は映画程シリアスでないし、何なら映画冒頭で描かれた街破壊描写をギャグとしてバンバン見せてくるので、
結構悪趣味なのよね。
ただモジョ・ジョジョの人間臭い側面はテレビシリーズならではなので、興味があれば是非。
悪役なのに、赤信号を守りつつスーパーへ向かい、レジの行列も守った上、ちゃんとお金払って(その金はどこから得たんだ)、卵を買って帰るモジョが愛おしいんだ。
榊ニル

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