榊ニル

カーズの榊ニルのネタバレレビュー・内容・結末

カーズ(2006年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに見返したので改めてレビュー。

私は幼少期から生粋のピクサー信者で、
特に初期の傑作達は脳内でリバイバル上映
出来る程にリピートしてきた。
勿論本作も例外では無いのだが、
他作品と唯一に異なる点があった。
それは「あんま面白くないな‥‥‥」と
思いながら見ていたことだ。

まず初見となる映画館での鑑賞。
ニモ、インクレディブルを劇場で見てピクサー大好きっ子と化し、過去作をビデオ・DVDで何周も繰り返していた中でのカーズ初体験。
‥‥‥‥正直あまり覚えていない。
序盤のピストンカップが楽しかった記憶はあるが、ラジエーター・スプリングスという平凡な田舎描写が物語の大半を占めている都合、子供心としては物足りない、悪く言えば退屈と感じていた記憶だ。

その後親にDVDを買って貰い、
何度も見返しはするのだが、どうもハマれなかった。他ピクサー作品は、必ず大きな山場が何度もあるし、物語の進行度に応じて舞台を転々とするため、視覚的な楽しさが最後まである。それらの作品と本作を比べると、
エンタメ映画としての刺激が足りなかったのだ。

しかし子供の頃の私は「見返さない」という選択肢を取らなかった。大して面白くないと分かっていても、何故かディスクを取り出してしまうのだった。
劇場は、親が運転してくれた車の後部座席。
DVDプレーヤーを前の席の背面に設置し、
買い物帰りでウトウトしつつ、ラジエーター・スプリングスでの日常を繰り返す。今思えば、日中歩き疲れた体にとって、車の揺れと、のどかな田舎の風景描写が心地良いから、本作を選んでいたのではないかと回想している。

そんな思い出深い作品が、カーズだった。

その後しばらくピクサー熱が冷め、トイ・ストーリー3以降からインクレディブルファミリーまで、飛ばし飛ばしで作品を見る時期が続いた。
自ずと過去作品も見る事が無くなっていた。

そして最近(と言っても5年程前だが)、
ピクサー愛が再燃し、改めて過去作を網羅する事に。勿論本作も見返した。




少年時代に見た映画とは別物だった。
何故こんなに素晴らしい名作を楽しめなかったのだろうか。

ラジエータースプリングスの街並みは、
日本の文化とは大きくかけ離れているものの、何故か懐かしさを感じる。
自身が生きていない世界のはずなのに、
古き良き時代を懐古させてくる。

そこに生きる車々(?)も全員魅力的だ。
始めは街を滅茶苦茶にしたマックイーンを
煙たがっていたが、彼が成長するに連れて温かく迎え入れてくれる優しさに心打たれる。

ベストシーンはやはり、シュブーンをBGMに、ネオンで彩られた街をゆったりと走る件だろう。ラジエーター・スプリングス色に染められたマックイーンと、かつての繁栄を懐かしんでいる住民達を見ていると、目頭が熱くて仕方ない。

そして何より、時代の流れにより過去に置いてけぼりにされた町で、今を生きる若者が先人達が残した文化に触れ、未来へ紡ごうとする更生物語が刺さり過ぎてしまった。最後のレースで、レーサーとしての先輩であるキングに経緯を払い、背中を押しながら共にゴールするラストは見返せば見返すほど好きになるシーンだ。

以上、初見時は微妙な評価だったものの、
私自身が年を取るのに比例して評価が上がる、上がり続けている名作です。今の時点でも歴代ピクサーの中でも五本の指に入る程好きなのだが、私が5,60くらいになった際に一番になっている気がする。

ただ2は絶対に許さないからな!
クロス・ロードも名作だが2が微妙なせいで積み重ねが足りんのよ。
榊ニル

榊ニル