mh

1900年のmhのネタバレレビュー・内容・結末

1900年(1976年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

イタリアの農村に生まれた身分の違う子どもふたりが、激動の戦前、戦中を過ごす大河ドラマ。
なぜイタリアで共産主義が盛んになったのか。どうして黒シャツ隊が台頭したのか。
それを順を追って(グロさをやや誇張して)やってくれるので、めちゃくちゃ勉強になる。
搾取する側の地主がデニーロで、搾取される側の小作人(のち、パルチザン)がジェラドパ。(そんな略し方は聞いたことない)
酒やコカイン、ギャンブルに明け暮れてる富裕層と、いざ権力を手にすると、反知性主義となる貧困層。
二元論にしてくれてるので、話はわかりやすい。
反ファシズムでそれ以外の政党、民衆は結託してイタリアは自分たちで立ち直る。イタリアに、東京裁判、ニュルンベルグ裁判に相当するのもがないのは、人民裁判に代表される裁判で、ムッソリーニを含めた戦争犯罪者を自ら裁いてしまったからだそうだ。
グロ、ゴアシーンが多いのはこの監督の特徴かな? 力ずくでも印象に残してやろうとするのは効果的だった。
共産主義と社会主義が混在する字幕が紛らわしいんだけど、このあたりはそんな気にするところじゃないみたい。ナチスドイツの国家社会主義に引っ張られてるの反省したい。
極悪夫婦、自由奔放で純粋な妻など、ステロタイプではあるんだけど、王道で徹底した結果、異様にキャラが立っててよかった。もちろん、役者さんの存在感あってこそなんだろうけど。
小作人たちの集団生活、歯がなかったり指が欠けてるとかの見た目の違い、大人もパペットに夢中とか、細部も良かった。
ラストはさらに時間を飛ばしてる。かれらを仮に70とすれば、1970年か。いやだぶん、この映画が作られた1976年と読み解くべきか。現代と地続きにしたってことか。このあたりもいいなぁ。
それにつけても人民裁判はやばいよね。教育が低いひとたちによって理不尽に裁かれるのは文科系のひとたちの悪夢だと思う。
あとなんかちょっと木下恵介「永遠の人」にも構造が似てると思った。日本とイタリアの、農村事情の違いが見えるのも面白かった。
なかなか置いてないし、5時間越えだし、見る機会はそうそうないと思うんだけど、イタリアの戦中史をさらっておくにはこれ以上ない一作。
面白かった!
mh

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