NYのネオン街によく似合う余裕綽々たるサックスの音色と、虚無感に満ちた主人公の心情が恐ろしいほど不一致で、終始とても居心地の悪い思いがする。
主人公の言動から垣間見える矛盾した思考回路は、チグハグなのだがどこか共感性があり、常識人ぶる観客のことを睨みつけてくる。時代を超えて、今もなお。
この映画は、ベトナム戦争からの帰還兵が引き起こす犯罪劇の反戦映画として観るのが好きでしたが、今回はトラヴィスではなくスコセッシの狂気に耽溺。
監督が持つイジの悪さや、独特なユーモアセンス、おしゃれ感覚には本当に惚れ惚れする。唐突なインサートカットの美しさにもウットリ。
トラヴィス流の正義に触れたくなって、久々の鑑賞でした。
トラヴィスに憧れがある、というと語弊があるが、憧れがない、というと嘘になる。たぶん私の中にもトラヴィスはいる。