森野c5果実

潜水服は蝶の夢を見るの森野c5果実のレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
4.5
ファッション雑誌ELLEの編集長を務めるジャンドー。
働き盛りで、何不自由ない生活をおくっていたが、突然 脳出血に倒れ全身麻痺になってしまう。
手足を動かすことも喋ることも一切できない、まるで潜水服に閉じこめられているかのような状況下で 唯一動かせる左目の瞬きを使ってコミュニケーションをとれるようにはなるが、ジャンドーが言語聴覚士に伝えた言葉は「死にたい」だった。

次第に状況説明的な引きのカットも見られるようになるが、基本的には全身麻痺のジャンドー目線でしか世界が見えず、身動きとれないもどかしさの中で物語が進んでいく。
それなのに、不思議と重くないのだ。

確かに状況は深刻なのだけれど、ジャンドーのユーモアにより心地良いような感覚さえあった。
そのユーモアのことを本作では蝶と言い表しており、独特の映像美と織り交ぜながらまとめられている。

そして、最初は死にたいと嘆いていたジャンドーだが、言語聴覚士に瞬きでひとつひとつ文字を伝えるという手法で自伝書を執筆するまでに至ったのだ。
身体的な自由を奪われても心の声を発し続けようとする姿勢と、過ぎ去りし日々に思いを寄せる姿が胸にささる。
自分だったら何を思って過ごすのだろう...

ぜひ、原作本も手にとってみたい。
森野c5果実

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