森野c5果実

ウエスト・サイド・ストーリーの森野c5果実のレビュー・感想・評価

4.0
ブロードウェイ史上、映画史上に残る傑作 『ウエスト・サイド・ストーリー』がスティーヴン・スピルバーグ監督の手により現代に蘇る!

『ウエスト・サイド物語』がいかに画期的な映画かというと、それまでのミュージカルと言えば(例えば『巴里のアメリカ人』『雨に唄えば』など)元々が舞台から生まれたものなので俳優の芸を見せたり、内容も愉快で楽しいものが多い。
ところが 『ウエスト・サイド物語』は移民問題・貧富の差・10代の不良化問題など、扱う題材がそれまでのミュージカルとは大違い。
また、役者が必ずしもスターではなくても良いというところもポイントで、音楽とダンス、高層ビルが屹立するNYが主役なのです。

ジェッツやシャークス、街の子供たちも加わって圧巻のスケールで興じられる「America」は誰でもノリノリに。
街の人々を巻き込んでいく様は『イン・ザ・ハイツ』っぽくもある。
トニーとマリアの「Tonight」もうっとりしてしまうほどの優しい歌声♡
(あんな一目惚れしたいなァ、されたいなァ)
ふたりでずっとデートスポットに留まってくれていたら、あんなことにはならなかったのにね......

作中、トニーとマリアを柵越しに映すカットが多用されていて互いの顔が見辛く、何とももどかしい気持ちになりましたね。それはまるでふたりの間にある障壁を表しているようでした。
ラストシーンではトニーを抱えたマリア達を俯瞰で捉え、建造物の外階段が被って映っていましたがこの外階段の意味は何だろう。これは主観だけれど、これは”柵越しに見ているトニー”の目線ではないでしょうか?

「ここにしか居場所がない」と劇中に何度も口にしていたジェッツとシャークスの融和の兆しが少しだけ垣間見えた瞬間を見つめるトニーの魂の目線。儚く死んでしまったトニーへの弔いの演出に思えてなりません。
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