円柱野郎

パピヨンの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

パピヨン(1973年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

アンリ・シャリエールの自伝小説を原作に、無実の殺人で収監されたパピヨン(蝶)の入れ墨を持つ主人公の脱獄計画と数奇な運命を描いた脱獄映画。

原作が自伝という事で実話ベースの物語だけど、映画の流れだけでも十分いろいろ起こっているのに元の話だとさらにいろんな監獄に入っているらしく、だいぶ映画用に脚色(要約)されている様子。
それだけ濃い内容でもあるのだけど、内容としてはやや前半と後半でアンバランスな感じもしたかなあ。
前半は本土からギアナまでの移送を通じての親友ドガとの出会い、そし労役や独房生活がいかに過酷であったかの様子がこれでもかを描かれる。
他が過酷すぎるので、泥まみれになってワニを捕獲するシーンがむしろ和むくらい(苦笑)
とにかく独房のシーンがこの映画のメインって感じで強烈。
このあたりは心象風景の使い方も絶妙で、荒野のただなかで裁判官から「人生を無駄にした罪」を言い渡されたり、並木道の向こう側で死んだ囚人仲間が出迎えていたり…。
この辺はなかなかにゾッとする。

一方、後半に差し掛かると脱獄計画の実行がメインになってくるけど、音楽祭の音に紛れての脱獄、ハンセン病患者の居留地での取引、ホンジュラスへの航海、上陸直後に現地警察に追われ、インディオの村での生活、修道女に告発されて再び5年の独房生活…。
ちょっと詰め込み過ぎw
映画の前半とテンポが違いすぎてちょっと面食らってしまいますわ。
台詞なしで見せ切るインディオの村での生活は情景としても良い感じなんだけど、全体の流れを見た時には正直このパートが要るのか微妙な感じもしたかな。

パピヨン役のスティーブ・マックイーンと、ドガ役のダスティン・ホフマンは違ったキャラクターのコンビでいい感じ。
終盤には両者ともどこかまともではない感じもする雰囲気になってしまっているけど、このような監獄生活なら…という説得力はあった。
結局のところ、この話が「収監されるようなことをして人生を無駄にするな」と言っているのか、「執念があれば脱獄できる」と言っているのか、「俺はこんな苦労をしたんだぜ」とシャリエールが言っているのか、そこは曖昧なまま終わってしまった印象はある。
円柱野郎

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