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バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.5
 『バットマン フォーエヴァー』に引き続いて、ジョエル・シュマッカーが監督を務めた89年のスタートから通算4作目の『バットマン』にして20世紀のシリーズのフィナーレとなる本作。これまでもジョーカーやペンギンなど数多のヴィランたちがバットマンに襲い掛かったが、今回は冷凍スーツの原動力となるダイヤモンドを強奪するために、バットマン&ロビンの黄金コンビの前にMr.フリーズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)がアイスメン軍団を率いて現れる。『ターミネーター』のT-800や『トータル・リコール』のダグラス・クエイドを真っ先に想起させるMr.フリーズのキャラクターは透明な氷に覆われている。同じ頃、生真面目な植物学者パメラ・アイズリー(ユマ・サーマン)は、食虫植物の毒液の中に突き落とされ、魔性の美女ポイズン・アイヴィーとして生まれ変わる。ジョエル・シュマッカーの演出法はほとんど変わらず、今回も両雄並び立たずで、シリーズ中最もヴィランのキャラクター造形や書き込みが弱い。彼ら2人に加え、植物保護のため街を滅ぼそうとする彼女は部下の怪人ヴェイン(ジープ・スウェンソン)までもが襲い掛かるのだが、毎度のことながら繰り広げられるロマンス描写も今回は弱く、シリーズ史上最も強大な敵にも関わらず、専らブルース・ウェイン・ファミリーの描写が中心となる。

 今作の目玉は中盤から登場するバーバラ・ウィルソンことバットガール(アリシア・シルヴァーストーン)と、シリーズを完走したアルフレッド・ペニーワース(マイケル・ガフ)の衰え行く身体を巡る葛藤に他ならない。いつの日も失意のブルース・ウェインを鼓舞し続け、彼の茶目っ気やダメな部分も見守って来た大ベテランのアルフレッドの死の兆しに加え、前作でのロビンの登場に引き続いて、また新たなフレッシュなキャラクターが彩を添える。マイケル・キートンからヴァル・キルマー、そしてジョージ・クルーニーへと変遷したバットマン自体も心なしかロビンとバットガールに生きる指針を見せる大人びた人物へと成長を遂げ、時にメンターとして、時に汚れ役を買いながら彼らの成長を促すコーチ役も担うのだ。ゴッサム・シティの街並みのディテイルなどはティム・バートン版のまるで『カリガリ博士』のような陰影など望むべくもないほどごく普通のアクション映画に成り下がっているものの、ゴッサム・ミュージアムや地下秘密基地バットケイブの造形など部分部分でそれなりのオリジナリティ溢れる背景に仕上げている。また中盤のカー・アクションも新機軸だろう。然しながら似たようなパターンで繰り広げられる戦いは流石に食傷気味で、一番シンプルだったバットマンvsジョーカーの構図が懐かしい。今作の失敗により同シリーズの5作目の製作が頓挫し、まったく新しいクリストファー・ノーラン3部作が登場するのだ。
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