雨丘もびり

フランケンシュタインの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

フランケンシュタイン(1994年製作の映画)
4.8
凶悪に急き立てるオーケストラの音が恐い。
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実は原作に「死体を繋ぎ合わせて」とは書かれていない。
反ワク罪人の屍に医学教授の脳を入れて蘇生する設定は本作オリジナル。”怪物”の繊細さと知能の高さに説得力を持たせる試みが秀逸で、1931年版映画(カーロフ版)の冒涜的な改悪から原作の魂を取り戻すことに成功している。そうよ、快楽殺人犯の脳味噌じゃないんだよふざけんな馬鹿野郎。
ロバートデニーロ演じる怪物の(もういじめないで)と懇願するような眼差し、やりきれなさに涙が出る。
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フェミ文学というより、メアリが抱く”男親不審感”が書かせた小説だと思うけど、本作も無責任親父の大博覧会になっていてとても原作に忠実w。
一方、「やれることならなんでもしてあげたい」という親心の暴走に歯止めが利かず、神的に悪魔的にやり狂ってしまう愚かな人々&怪物の恐ろしさも迫真。コワイ。
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ヘレナボナムカーターにも胸を掻き毟られる。
ヴィクターの”隠し子”に殺され、ヴィクターの独りよがりでズタズタな姿で蘇えらされた妻が、夫の身勝手さに蹂躙された苦痛を叫び呻き呪う姿に言葉を失う。
私には、どこか妊娠・出産でぼろぼろになった身体にも見えて余計辛かった。
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かなり理想的な抜粋とデフォルメが見事だけど、幼弟ウィルの殺害とジュスティーヌの冤罪処刑はちょっとプロセス端折りすぎで💦ズッコケる。
あと、怪物がヴィクターを呪うまでは本当ならもう2〜3ステップあって、酷い父親に愛されよう愛されようとする痛ましい努力があるんだけど...まぁ仕方ないよね。原作プロットを丹念に映像化しすぎてて時間足りないか(褒)。
エリザベスの首をジュスティーヌの身体に挿げ替える狂気性はおぞましくてGood。
ラストシーンも本作オリジナルだけど、創造主から火を受け取るポーズは『プロメテウス』的でもありお見事。地割れも旧約聖書感。
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原作...といっても改訂版の翻訳だけど。
ヴィクターは無機物に生命を吹き込む方法の説明をはぐらかしているので、怪物誕生の方法も説明されず、従って「死体を繋ぎ合わせて」という記述は無い。
文中に「墓場や遺体安置所で死の経過について研究した」と口述する場面はある。
また人骨を用いたこと、医学部の解剖室や動物の遺体から材料を得たことは書かれている。それをふまえてなのか、本作の怪物の右目はヤギのように横長の瞳孔になっている。