次郎

ベルリン・天使の詩の次郎のレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.7
ベタで詩的過ぎるという指摘はその通りなんだろうけどそれを踏まえた上で最高だった。1987年という壁がまだ存在したころのベルリンという、モダンな建築群と戦争の爪痕を残す空地、子供たちとサーカス、そして天使のモチーフが多数埋め込まれた街並みがかくも美しく切り取られている。聖と俗の対比がありながらも、その両者を優しく包み込む世界観。ホメロスから現代文学までを一本の糸に結びながら、その瞬間でしかない人日の生と感情を丁寧に肯定している。

前半部だけなら単に詩的で芸術性の高い、抽象度の映画というだけで留まってしまうところなのに、元天使で本人役という設定の刑事コロンボが俗への入り口を務め、クライマックスではニック・ケイブの最高にヒプノティックなポストパンク・サウンドが鳴り響く。 From Her To Eternity、カッコ良すぎ。

https://www.youtube.com/watch?v=QSia5QE3rZ0

これから何年か経って、ふとした瞬間にこの映画を観れたことを喜べるような、そんな作品。
次郎

次郎