次男

ドニー・ダーコの次男のレビュー・感想・評価

ドニー・ダーコ(2001年製作の映画)
4.1
「一回観ただけじゃわからん系」(「リバースムービー」なんてかっこいい言葉で呼ばれていたのね)で、『メメント』と並べられる難解作品、らしい。

物語の解読はさておき、まず作品自体のルックがすげえ。映画の倒錯間が、17歳のサイコ感として丁度良すぎて!適度に中二的で、ナルシスティックにホラーで、逆説的に自己愛を感じるというか。比較するなら『メメント』は主観の話なのにすごく客観的でドライ、本作は主観の話をド主観でウェットに作ってた。

◆◆

ドニー・ダーコは、ある晩、銀色のウサギに「世界の終末」のカウントダウンを告げられる。残り28日と6時間42分と12秒」。翌朝、ゴルフ場で目を覚ます。家に戻ると、飛行機のエンジンが自宅に墜落していた。


◆◆
ネタバレ
◆◆


解釈の仕方は諸説あるみたいだけど、僕はこの話を、ドニー・ダーコの精神世界の話だと思いたい。
理由のひとつは、個人的に未来人とかタイムトラベルとかそういう話が宙に浮くようなファンタジーさはこの映画に合わないって思っちゃったから。もうひとつは、上述のような主観的なウェットさを感じたから。

走馬灯的な、今際の際に思考の速度が急に上がって数秒の間にたくさん考える、的な話あるじゃんすか、ああいう感じで捉えたーいと思った。

◆◆

10月2日に飛行機のエンジンが落ちて、ドニー・ダーコは死ぬ。これはもうそれ以上でもそれ以下でもなく純然たる事実。この話は、「孤独な死」を受け入れられないドニー・ダーコが、飛行機が屋根を突き破って自分に落ちてくるまでの1秒もないその瞬間の、濃縮された思考で作った「死を正当化する未来」の話。


「もし僕が今ここで死ななかったら、なんやかんやと起きた末に、結局みんな不幸になる。恋人は死に、母と妹も死に、姉のボーイフレンドも死ぬ。でもいまここでおとなしく死ねば、誰も不幸にならない。みんなのために死ぬ」。ってことにする。みんなのために死ぬってことは、孤独な死じゃない、って言えるのかもしれない。

そんな仮想の世界の体験は言うならば未来旅行で、未来旅行の目的は、いま目の前の死の正当化。だから、暗い未来に誘わなきゃいけない。銀色のウサギを案内人にして、胸から飛び出るドロドロが道筋を示して、近所のボケた老婆をタイムトラベルの先駆者にして、自分の精神異常も発展させる。暗い未来を作るために。ここで死ぬのがベストだと思い込めるように。

「世界の終末」は、現実で飛行機のエンジンが落下して押し潰されて本当に死ぬその時のこと。スーパースローの世界で目の前にエンジンが落ちてきた視界があるとして、早く早く!早く正当化する悲しい未来を作って!思考できる体感時間は残り28日と6時間と…

◆◆

なんて、この解釈の仕方が辻褄あってるのかも確かめもしてないけれど!

でも、ジェイク氏の作り過ぎなくらいの影の様相は、やっぱり自分で作り出したポジティヴなモチベーションが原因であってほしいな、と思うのです。

◆◆

…にしても、『遠い空の向こうに』であんなに爽やかに青春過ごしといて次作でこんな闇堕ちしちゃうなんて、どんな懐してんのよジェイクさん。観る順番逆じゃなくてほんとよかったわ。爽やか演技信じられんくなるわ!
次男

次男