経済をテーマにした作品としては珍しく、ビジネスの冷徹さを背景にした人間ドラマを描こうとした意欲作。しかしながら、その野心的な設定と緊迫感のある演出にもかかわらず、全体としては「映画」としての完成度に疑問符がつく仕上がりとなっていました。
まず最大の問題は、映画としてのテンポ感とドラマ性のバランスが崩壊している点。緻密に描かれるべき経済の駆け引きを、たった2時間に凝縮しようとした結果、物語の進行があまりにも駆け足で、感情移入する余地がほとんどない。物語のテーマである「ファンドによる企業買収」や「資本主義の光と影」は確かに重厚。けれども、劇中の説明台詞の多さが目立ち、情報を詰め込むだけの「教養映画」になってしまあた、緊張感やスリルが、会話の中で解説されるだけになっているのは非常に惜しい。
経済を題材とする映画の少なさを補う存在ではあるけれども、完成度は明らかに難がありでした。