ほいほい

猫は逃げたのほいほいのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
3.2
タイトルの通り「猫」が出てくるんですけど、実は猫そのものがテーマじゃなく、むしろ「人間関係のもつれ」や「不完全さ」を象徴するメタファーとして描かれているんですよね。だから、観る側としては「猫をどう捉えるか」がこの映画の面白さに直結してきます。

映画の中で描かれる「猫が逃げる」っていう行為、これ、単なるペットの行動じゃない、むしろ、登場人物たちの感情や状況そのものを象徴している。

猫が逃げる=コントロール不能な事態
猫を追いかける=人間の執着や未熟さ

猫は、自由に動き回る存在なんだけど、登場人物たちはその自由を「管理しよう」とする。これが、映画全体を通じて描かれる「不完全な人間関係」のメタファーなんです。
つまり、猫はキャラクターそのものではなく、物語全体の「歪み」を具現化している。


この映画の主要なキャラクターたちは、みんな「どこか歪んでいる」。でも、それがすごくリアルなんですよね。例えば主人公が抱える内面的な葛藤や、自分の感情をうまく処理できない不器用さ。その不完全さが観客にも響く作りになっていて、どこか共感できる部分があるんです。
「ああ、こういう自分勝手なところ、自分にもあるな」とか、「相手の気持ちがわからずに失敗した経験があるな」とか。

物語の進行自体はシンプルなんですが、細部がめちゃくちゃ緻密なんです。猫を探す過程でキャラクターたちの関係性が次第に変化していくところ。これ、猫を探すという「外的な目的」を進めながら、同時にキャラクターの「内的な葛藤」が描かれる。こういう二重構造をきっちり描いている。

そして、この「探しもの」っていうテーマが、「自分が本当に探しているものって何だろう?」とか、「そもそも、自分の失ったものは何だったのか?」とか。自然と自分の人生に重ね合わせて考えちゃう構造になっていて面白かったです。
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