サマセット7

X-MEN2のサマセット7のレビュー・感想・評価

X-MEN2(2003年製作の映画)
3.7
X-MENシリーズ第二作目。
監督は「ユージュアルサスペクツ」「スーパーマンリターンズ」のブライアン・シンガー。
主演は「レミゼラブル」「グレーテストショーマン」のヒュー・ジャックマン。

大統領官邸を、テレポーテーションを操るミュータントが襲撃。
世論が沸騰する中、ミュータント対策本部顧問のストライカーは、襲撃犯捜索名目でX-MEN本拠地の「恵まれし子らの学園」を襲撃する。
しかし、ストライカーには真の目的があった。
プロフェッサーX率いるX-MENの面々は対応を余儀なくされ、一方で前作で囚われたブラザーフット首魁マグニートーを救うべく、変身能力を持つミスティークが再び蠢動する。
やがてX-MENの一員ウルヴァリン(ヒュー)は、自らの過去と直面することになる…。

マーベルコミックのアメコミヒーロー群像劇、X-MENの映画化シリーズ第二弾。
マーベルスタジオがMCUのプロジェクトを始めるはるか以前、1994年にキャラクターの映像化権を買い取った20世紀フォックス製作でシリーズ化された。
そのため、MCUとは世界観を異にする。
シリーズは、旧三部作、新三部作、ウルヴァリン単独スピンオフ三部作、ダークフェニックス、デッドプール二作と多岐に及ぶが、今作は旧三部作の2作目にあたる。

評価の浮き沈みの激しいシリーズ中でも、比較的高い評価を得ており、前作を超えるヒット作となった。
前作と今作で、ヒュー・ジャックマンの知名度が高まったことは有名。

前作はシリーズの最初の作品ということで、X-MENとブラザーフッドの2つのチームのイントロダクションの色合いが強く、多数の超能力者が入り乱れる群像劇を、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンを中心に整理して、手堅くまとめた感があった。
前作と同じブライアン・シンガーが監督を務める今作は、陣営や能力の紹介は終わった!今度こそ本番だ!とばかりに、3陣営が入り乱れる複雑なストーリーを描いている。

3陣営とは、まず、プロフェッサーX率いる、穏健派のミュータントチームX-MEN。
ウルヴァリンはここに属し、人類との融和を図るが、プロフェッサーXの強力すぎる力が今作では利用されることになる。

次に、マグニートー率いる、過激派のミュータントチーム、ブラザーフッド。
今作で登場するのは、マグニートーとミスティークの2人のみだが、両者とも強力な能力を誇り、今作でも絶大な存在感を発する。
前作で描かれた通り、彼らの最終目的は、新人類たるミュータントが、人類支配にとって変わることにある。

そして、ストライカー率いる人類の対ミュータント部隊。
彼らはミュータントに対する人類の強硬派であり、全ミュータント抹殺を目的とする。

三陣営がそれぞれの目的を持って動くこと自体複雑だが、さらに、ウルヴァリン、ジーン・グレイ、スコットの三角関係、ミスティークとローグがウルヴァリンに寄せる微妙な感情、ローグ、アイスマン、パイロの若者たちのミュータントとしての葛藤、ストライカーとウルヴァリンの因縁、ストライカーの過去など、各キャラクターが独自の考えを持って行動するため、前作以上に、群像劇としての面白さが前面に出ている。

異能のミュータントたちが、独自の目的をもち、能力を駆使して物語を形成することそのものが、今作の見どころだろう。
超能力を駆使する印象に残る面白いシーンは数多い。
悪魔的外見のナイトクロウラーの転移シーン。
パイロが発火能力を駆使して暴走するシーン。
囚われたマグニートーがいよいよその本領を発揮するシーン。
ストームによるド派手な航空機撃退シーン。
ウルヴァリンとレディ・デスストライクの激闘。

特に、前作に引き続き、変身能力を持つミスティークは、その能力を駆使して物語を面白くしてくれる。
映像として、もっとも美味しいキャラクターだろう。
容易に語られず、推し量るしかない複雑な内面も興味深い。

もちろん、ヒュー・ジャックマンは、相変わらず役にハマって、ワイルドな魅力ムンムンである。
悪の魅力を漂わせるマグニートーも、イアン・マッケランの役者としての格もあり、無双感がたまらない。
ウルヴァリン、マグニートー、ミスティークの3者の活躍を見るだけでも、このシリーズを追う価値がある。

原作コミック準拠のテーマは明確で、差別対象となった者たちの陥る苦境と悲劇、その中でいかに行動するか、が多様に描かれている。
ナイトクロウラーの懊悩、アイスマンことボビーの家族との悲痛な会話、ストライカーの過去と目的など、人間が弱さゆえに他者を排斥する様、相互理解の困難さが、繰り返し描かれる。
今作では、どちらか一方の結論が示されることなく、希望と絶望の両方が提示されているかのように見える。
これは、現実社会において、現在も引き続き差別問題はなくなっていないことを暗喩している。

MCUなどの最近のアメコミヒーローものと比べると、映像技術、格闘技術、ユーモアなどなど、流石に見劣りすることは否めないが、差別という重いテーマを軸とした、超能力者群像劇の面白さ、上述の三者を中心とするキャラクターの魅力は、やはりこのシリーズ独自のものであり、今でも十分鑑賞に耐える。

人気アメコミヒーロー群像劇の、順当な続編。
ライミ版スパイダーマン3部作、ダークナイト3部作と、アメコミヒーローもので3部作を作ると、1作目がオリジンの制約がある分、制約が解かれた2作目がより面白くなる、ということはしばしばある(続編で失敗するケースも多いが)。
今作もその系譜に数えられよう。
続く3作目の評判は今ひとつだが、リブート後の2作の評価は上々。また、ウルヴァリン単独作のラスト、ローガンも評価が高い。
一般的には、ローガン=F&P>FC>2>1>その他、といったところか(デップー1、2は除く)。
せっかくなので一般的な評価には拘らず、シリーズ制覇を狙っていきたい。