はぐれ

都市とモードのビデオノートのはぐれのレビュー・感想・評価

3.3
世界的デザイナーの山本耀司を追ったドキュメンタリー。風合いや生地、フォルムにこだわり黒以外の色を排除した作風の山本耀司に対抗して、35ミリフイルムとビデオテープの異なる質感を用いて被写体に迫るヴェンダース。この巨匠の意地の張り方がなんとも微笑ましい。

なんと言ってもユニークなのは当時最先端であった手持ちの小型モニターにインタビューの映像を流しながら、そのモニターをパリの街並みを背景にして35ミリフイルムで撮影しているという点だ。モニターに映るザラザラとしたビデオの質感とフィルムの滑らかな質感。この対比を何度もしつこく繰り返すヴェンダース。隆盛を極めるビデオ産業に対する旧来のフィルム世代の矜持を感じられてゾクゾクする。また、風景の中に小さなテレビ画面がある構図はまんまYoutubeの違法動画のそれにしか見えなくて思わず笑ってしまった😂あのいびつな構図で撮影したの世界初じゃね?(笑)

80年代後半の東京の空気感を見事に捉えたヴェンダースの佳作。監督も自らナレーションで告白していたがあの当時の東京を映し出せるのはフィルムではなく質感の荒い磁気のビデオテープだ。山本耀司と同じ様に画面の質感にこだわり抜いたヴェンダースの鋭い感性に改めて感心してしまった🥺
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