アラサーちゃん

戦争と平和のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

戦争と平和(1956年製作の映画)
2.5
19世紀のロシア。ナポレオンのモスクワ侵攻が囁かれる中、ロストフ伯爵家では、長男ニコラスの出征に皆が嘆いていた。妹のナターシャは、共に兄を送り出した幼なじみのピエールに密かに恋心を抱いていた。貴族の婚外子であったため中流家庭で育った彼は、父親が亡くなったことで多くの財産と伯爵の地位を受け継ぐ。その地位に目をつけた公爵の手中にはまり、ピエールは美しい公爵の娘エレンと結ばれた。しかしエレンは奔放で、散財する上に不貞を働き、やがてふたりの婚姻関係は解消される。やつれたピエールの心を癒やすのはナターシャだった。
しかし、ピエールの結婚により失恋した彼女は、妻を出産で亡くしふさぎ込んでいる、公爵のアンドレイと恋に落ちる。1956年、伊・米。

あらすじ書くだけで長い……
書いてたらなんだかラストまでぜんぶあらすじ書いてしまいそうだ。まじで。あぶない。

話は「戦争って嫌ね」っていうある意味平和じゃなきゃできない会話からはじまって、ナポレオン軍のモスクワ侵攻・撤退を経て、モスクワに再び平和が戻り、幕を閉じる。
この穏やかな波から嵐やシケを経てまた穏やかな波に帰る感じが、紆余曲折を経て結ばれる主人公ナターシャとピエールの関係にも投影されてる。

登場人物たちが多いくせにみんな奔放すぎるよね。ラストを迎えるとどの人物のどの行動も意味があってちゃんとこの結末をもたらしてくれるんだなあと思うのだけど、整理しないととにかくやっかい。
3時間半、しかも歴史モノだからそれだけでも観たあとのぐったり感が半端じゃないのに、この日本ならトレンディドラマ並のストーリーの複雑な絡み具合、すごかった。

原作はトルストイの名作「戦争と平和」。映画ではオードリー演じるヒロインのナターシャがプリンセス扱いでロマンスの描写が多いけど、原作はきっともっと「戦争によってもたらされたもの」「戦争に振り回された人々」が書かれているのかなと思う。
商業映画だから仕方ないんだけど、ロマンスに力入れるわりには戦争にまつわるエピソードもストーリー上抜けないし、結果なんだかものすごいスケールのものを観ちゃった感が半端ないです。クストリッツァ観た気分だよ。とりあえず原作読みたい。

個人的には映画の内容とあまり関係ないけど、ナターシャと、オードリーの元夫メル・ファーラー演じるアンドレイの舞踏会シーンが好き。
はじめての舞踏会に動揺を悟られまいと堂々と振る舞いながら、アンドレイのことを健気に思って、誰とも踊らない。ここにアンドレイがいれば、と夢を見ていたら、アンドレイ現る!で、ダンスのお相手を申し込む!
あのダンスシーンにはちょっとうっとりしてしまった。メル・ファーラーの顔の濃さとオードリーの清廉さが、ディズニーアニメのシンデレラと王子様に被るくらい様になってるんだよね。