違和感が調和する
1996年 岩井俊二監督作品
YEN TOWN BANDの『スワロウテイルバタフライ~あいのうた~』は、空で歌えるほどよく聴いたけれど、その曲がテーマの映画を観たいと思うことはなかった。公開から27年経ってからの初鑑賞。
舞台は、世界一強い円の力で栄えた無国籍都市・円街(イェンタウン)。日本人俳優が中国人を演じ、中国語を話す。米国人俳優が流暢に日本語を話す。最初は違和感だらけだったのに、だんだん馴染んで作品世界に惹き込まれた。
ストーリーは、ファンタジー要素あり、バイオレンス要素あり、ラブストーリー要素あり、成長ドラマ要素ありで盛りだくさん。でも、とっ散らかった印象はない。
金と暴力、ドラッグとセックスがたくさん描かれているのに、どろどろした印象は薄い。
現代では、すっかり世界の潮流となった多様性(ダイバーシティ)。それを27年前に創作しているのがすごい。違和感だらけのものを調和させているのがすごい。モチーフであるアゲハ蝶と音楽の力によるところが大きいのだろうか。
この作品は、今観る方が違和感が少ないんじゃないだろうか。タイムマシンで27年前に戻れるとしたら、その時代の感覚でもう一度本作を観て、時代のギャップ、強い違和感を感じてみたい。