「最初の任務は、自分の愛を殺すこと。」
ジェームズ・ボンドは、二度の暗殺任務に成功し“007”のコードネームを与えられた。ボンドは、テロ組織の資金源であるル・シッフルという男の企てを阻止するため、監視役のヴェスパー・リンドと共に、モンテネグロのカジノにて開催されるポーカーゲームに参加する。
「ノー・タイム・トゥ・ダイ」に向けての鑑賞。客層もおじさん世代が多いのも納得で、わかりやすいアクション映画とはちょっと違う、渋いシリーズなんだなという印象を受けた。これを書いている時点でダニエル・クレイグ版はすべて鑑賞済みだが、5作の中ではストーリー的に一番しっかりしているというか、大人びていると思う。少なくともブロフェルドよりかは。
ダニエル・クレイグがボンド役を務めると発表されたとき、「青目のボンドなどありえない」みたいな感じで散々に叩かれたらしいが、自分にとってはクレイグが初ボンドなので当然ながら特に違和感もなく観れた。
設定自体は至ってシンプル。何十年も前からあるご長寿シリーズだからか、特にボンド周りの説明はされないが、「MI6」という諜報機関に所属していて、「M」という上司のおばちゃんが指示してくる、ただそれだけですんなり入ることができる。
マネーロンダリングという言葉に馴染みがないので、よくわからないが、とりあえず犯罪組織のお金を預かって回してあーだこーだで生計を立ててる男、ル・シッフルが今作のヴィラン。面白いのは、今作はこいつが借金取りに追われているところ。ボンドらに対する表情はさすがのマッツ・ミケルセンということもあってエレガントなイケオジなのだが、借りてる組織の人間を前にするとめちゃくちゃ焦りの表情を露にするのがツボ。裏では全然余裕ないだけに、なんとしてでも大金を手に入れようとしてくる。そんなやばい状況で知らない英国人が邪魔してくるんだから、そりゃあ金◯玉潰しますわ。
タイトルの通りポーカーで争うお話。言うならポーカー“で”戦う。そんな優雅な人たちが神妙な面持ちでチャッチャッつってトランプいじくってる絵面面白いの?と思うでしょう、奥さん。だが製作陣はそんなこと百も承知でした。アクションあり、死にかけあり、こんなに席離れていいもんなんだ、ってくらいゲームが始まっても様々なお楽しみが待ち受けています。タイトルになるくらいのメインイベントが終わって、、からのその後の物語はあまり見ないような変わった構成をしているが、ここら辺からのテンポは割と良し。と思った。落ち着いていながらも緩急がついているので観やすい。
フェリックス・ライターが007版ランド・カルリジアンって感じで結構好き。黒人だし、同業者だし。エヴァ・グリーンのヴェスパーはクレイグ版5作のボンドガールの中で一番。愛する者には真摯に向き合う誠実さと、全てを虜にしてしまいそうな妖艶さを兼ね備えたはまり役。
あとは、ボンドの心臓マッサージがへなちょこすぎて殺しのライセンス剥奪レベルなのが気になる一作。