エジャ丼

フォロウィング 25周年/HDレストア版のエジャ丼のレビュー・感想・評価

3.9
「尾行する男─尾行される男─張りめぐらされた罠」

無職で作家志望のビルは、アイデアを浮かばせるため街中の見知らぬ人間を無作為に尾行していた。ある日、不法侵入の常習犯コッブに尾行がバレてしまう。しかしそれをきっかけに、ビルは彼に感化されていく。

いつか観たい…けどレンタルしかない…でタイミングを見失っていた、クリストファー・ノーランの長編デビュー作。『オッペンハイマー』の熱狂の最中という絶好のタイミングで再上映!これは観るしかない!!

全編がモノクロで、画面比も今日の映画とは違う。2001年公開の作品でありながら、哀愁漂わせる雰囲気の中展開されていくのは、今となっては彼の作品の代名詞とも言えるような技巧のエッセンスの数々。デビュー作から、彼の業は伊達じゃない。繊細な時系列の入れ替えと、曖昧だったそれぞれの点が次第に一つの線へと結びついていく伏線回収。今や夢と現実の狭間を、銀河を、時間を巻き込み意のままに操る壮大なエネルギーを持つ編集力が、一つの街で起こる、“尾行”が巻き起こす小さな捻れの物語においても存分に発揮されていた。

あとは個人的に、ノーランの作品に特徴的なじわじわと焦燥感を煽る音楽が今作でも多用されていたところもまた彼の映画らしかった。ハンス・ジマーやルドウィグ・ゴランソンは手がけていないものの、彼の意向は音楽にもしっかりと反映され続けていることがわかる。

これはまさに“衝撃のデビュー作”。劇場で観ることができてよかった。