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娘・妻・母のbluetokyoのレビュー・感想・評価

娘・妻・母(1960年製作の映画)
3.5
シナリオは当て書きだったのだろうか。だとすれば、有名女優が複数出演していて、交通整理が大変だったのかもしれない。
1時間30~40分ぐらいまでは、ダラダラと進行し、たいして面白くはない。そこを過ぎると、今まではこのための長い長い序章だったんだ、と思ってしまうほどの急転直下のおもしろさ。
加東大介さん演じる調子のよさそうな中小企業の社長さん、こいつ、なにかやらかしそうだったけど、期待通りやらかしてくれた。
前半は、出演者が多く、いまいち家族構成がわからなかったので、参考のためにキャストを書いておく。
高峰秀子さん演じる坂西和子。旧姓はひょっとして鉄本和子なのかな。冷静沈着、家事万端を担っているが、とくになにもしない。
原節子さん演じる早苗。老舗のどっかの店に嫁に行ったが、堅苦しくて嫌気が差していて、しばしば、息抜きのために実家に戻ってくる坂西家の長女。旦那は交通事故であえなく他界。ああ、よかった、という顔で出戻ってくる。保険金、100万円所持(いまのカネで1500万円ぐらい)。たぶん、保険金というより手切れ金なんじゃないかな。
わたし、お嫁に行くしか能がないの、と言うが、これは謙遜ではなく、本気なのである。ふにゃふにゃしている割に、やたらとフットワークが軽くてどこにでも行くし、あちこちに顔を出したり、人と会ったりするのであるのである。たちまちのうちに本命二人をゲットしてしまう。そのうちの一人、京都在住の人と再婚することになる。
草笛光子さん演じる谷薫。どっかの学校の教師をしている人と結婚。ドライな感じだが夫婦仲がいい。しょっちゅう夫婦で外食したり映画を見に行ったりしている。というより姑が嫌いなのである。早く、アパートでも借りて夫婦で暮らそうよ、といつも言っている。
坂西春子。こうるさい三女。未婚だが相手はいる。どっかの会社のOL。
宝田明さん演じる坂西礼二。坂西家二男。カメラマン。雑居ビルの二階?に撮影スタジオを持っている。ちょっとちゃらい男。
淡路恵子さん演じる坂西美枝、礼二の妻。礼二の撮影スタジオの下の階(一階?)に喫茶店だかブティックかなんかを持っている。年一回、夫婦喧嘩と称して、礼二と一週間ぐらい口をきかなかったり、一人で旅行に行ったりする。だが、夫婦仲はいい。
仲代達矢さん演じる黒木信吾。坂西春子の勤める会社の知り合いだったかな。甲府で葡萄酒の醸造技師をしている。寡黙な年増好きのむっつりすけべタイプ。早苗にとっての二番手候補としてはいいだろう。口づけまではいったが、最後はふられる。
加東大介さん演じる鉄本庄介。和子の叔父である。口のうまい外見は人のよさそうな中小企業の社長。和子の旦那から多額の融資を受けていたが、事業に失敗して夜逃げ、姿をくらませる。融資は自宅を抵当にしていたために旦那は自宅を失うことになる。
坂西勇一郎。坂西家長男。和子の旦那。鉄本庄介が夜逃げしてしまったおかげで、自宅を差し押さえられることになる。
金額は映画に出てくる。640万円である。いまの金額では8000万円ぐらいだろうか。
ここで疑問が出てくる。そもそも自宅は坂西勇一郎の所有している物件なのかということである。どうも、そうではないらしいのだ。
つまり、父親は遺言を残さないで亡くなったらしい。
映画の中でも、この点について触れられている。母親は三割分の213万円、残りは兄弟で等分に分けるとして、一人85万円ぐらいである。
とすると、坂西勇一郎は85万円分の権利しかないのに、640万円の自宅を独断で抵当に入れてしまっていたのだ。しかも、坂西勇一郎は早苗の100万円の財産のうち、50万円を追加融資にしてしまい、こちらもパーである。もっとも、こちらは早苗の同意を得ているが。
もっと悪質なのは、坂西勇一郎は利子を受け取っていたのだ。当時の普通預金の利子が4%だから、たとえば、5%ぐらいだったとすると、いまの金額では年に40万円ぐらいだろうか。
損失額は、母親、いまの金額で2500万円ぐらい、残りの兄弟、一人当たり、いまの金額で1000万円ぐらいである。裁判になるような気もするけどなあ。損失は損失なので、どうやっても、消えるだけである。ただ、坂西勇一郎はまだ働いているのである。損害賠償を請求できるはずなのだ。
映画ではそうはならず、家がなくなると、母親は誰が引き取るのか、ということで争うわけである。
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