りっく

愛のむきだしのりっくのレビュー・感想・評価

愛のむきだし(2008年製作の映画)
5.0
凄い、凄い、凄すぎる。
もうそれしか言葉が出ない。
何という凄まじい映画だ。
3時間57分の、自分のマリア様を探す旅。
真実の愛を初めて知り、それをどこまでも、どこまでも追い続けていく。

本作は漫画的なチープさや馬鹿馬鹿しさに満ち溢れている。
至る所に散りばめられている風刺、皮肉、嘲笑。
奇想天外で、もはや狂気的としか表現できないようなエネルギーをぶっ放しながら物語は突き進んでいく。

カルト的宗教団体、エロ・グロ、サディズム・マゾヒズム、虐待、性癖、トラウマ、コスプレ、盗撮、性欲、狂気、調教。
本作で取り上げられる題材の1つ1つが、日本社会の中で善しと思われないもの、タブーになっているもの、そして日常的に何らかの形で隠されているものだらけである。
それが文字通り“むきだし”になっている。

普段隠されているものが露になるという好奇心。
見たい、知りたい、感じたい。
そんな観客の欲望が物語と渾然一体になるという至福の時間。
それが本作のそそり勃つエネルギー源である。

ただし、物語の軸にあるのはあくまでも普遍的な“愛”である。
歪みきった家庭環境の中で育った人間たち。
“自分”を持てない人々は何かに必死に頼り、すがり、崇め奉りながら生きていく。
そんな不安定な精神が徐々に洗脳されていく恐ろしさ。
アイデンティティが内部からどんどん壊れ、崩れていくその姿は、魂を抜かれた“からっぽ”の人間である。

でも”あっちの世界”に行った人間たちも、どこか幸せそうに見える。
一体、本当の幸せとは何なのだろうか。
だが、あくまでもそんな“からっぽ”の状態の人間を、愛を頼りに、祈る気持ちで”こっちの世界”に連れ戻し、人間性を再生させようとする。
そんな愛を本能が、そして身体が覚えていたのだ。
まさに“愛のむきだし”だ。

西島隆弘が病院を抜け出し、やっと見つけた、たった1人の“マリア様”に向かって、どこまでも真っ直ぐに疾走する。
パトカーの窓をぶち破り、2人の間を隔てた“壁”が取り払われ、手と手を繋ぎ合ったその瞬間、まさに奇跡が起きたのだ。
愛の可能性に、涙が止まらなかった。
りっく

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