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スケアクロウのしゃにむのレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.5
ただのカカシ映画ですな(涙目)

通りの少ない田舎の道路のシーンから始まります。道路の傍らに少し落ち着きのない男が荷物を足元に置いて車が来るのを待っています。そこに不自然なほど厚着で不恰好に見える男が現れ、微妙に距離を置いて同じく車を待ちます。落ち着きのない男は彼に興味を持ってこっそり近づきます。すると厚着の男は男が移動した分だけ遠退きます。落ち着きのない男はそれに挫けること無くまた近づく…厚着の男もそれに応じて距離を取ります。とうとう落ち着きのない男は向かいの道路の傍らに行き厚着の男の真正面に立ちました。始まりから、ああ、この2人好きだなーっていきなり惚れました。

ちょっとのことですぐにキレてしまう短気な雷オヤジ(言い方が古いか)といつも周りの人を笑かさずにいられない陽気な男のロードムービー。対照的な2人が一緒に旅をするってストーリーはありきたりだけど、大好物です。友だちってほど親しくもないしかと言って他人ってわけでもない…微妙な距離感を意識するぎこちない雰囲気がくすぐったくて。

スケアクロウ…何処かで聞いた覚えがあると思って観ました。確かバットマンに出てきた幻覚怪人でしたっけ。スケアクロウの元の意味はカカシらしいです。スケアは脅かす、クロウはカラス。この2人のスケアクロウの意味の捉え方は正反対です。厚着の男は脅かすからスケアクロウなんだって。陽気な男はカカシのへんてこな顔にカラスが笑って作物は荒らさないでおこうって思うからだと。性格が現れますね。あーこの会話好きだ。

自分は陰気な方だから陽気な人の気は知れません。崩れ落ちたくなるくらい悲しいのにどうして本物の笑顔で振る舞えるのだろう。電話のシーンは胸が痛む。噴水のシーンはもう見てられません。無理にカカシになることはないのに…だからカカシの交代。友に笑ってもらうためにカカシになります。だけど、こっちは笑いより涙がこみ上げてきます。
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