そーいちろー

その男、凶暴につきのそーいちろーのレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
3.8
問題行動が目につく刑事が、管内の麻薬取引に関わることで、その出所が警察内部からの横流しである事実に行き当たる。調査をしていく中で物語はどんどんと悲劇的な展開を迎え、全ては崩壊へと突き進む。いわゆる典型的なフィルムノワールであり、その残酷さや筋道に特段の独自性は垣間見られない。しかし、北野作品は徹底して死というものや悲劇を乾いたものとして描き、感情ではなく、全ての発端を映像でのみ映し出す。精神疾患の妹も犯罪組織に巻き込まれ、薬漬けにされ輪姦される。その事実を否定するかの如く、薬を求める妹の様子を見た刑事は容赦無く実の妹を射殺する。では、その刑事が無敵かと言えばそういうわけでなく、また対峙する悪が巨大かと言えば、それはより凡庸なものであるのだ。悪はそれ自体から生まれ出るだけでなく、悪に触発され新たに生まれてくるものであると思わせるラスト。
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