そーいちろー

ミカエルのそーいちろーのレビュー・感想・評価

ミカエル(1924年製作の映画)
3.8
ドライヤーは変にプロットにこだわらず、シンプルな筋で壮麗かつ荘厳な映画を観せてくれるため、好きだ。背景には強固なキリスト教的価値観があり、本作は要するに堕天使ミカエルに関する物語を、孤独な老画家とそこに絵を習うつもりがモデルとして雇われた美青年ミカエルとの関係、その二人の関係を変質させるロシアの侯爵夫人、老画家にずっと仕える執事シャルル、といったキャラを基に描いた作品だ。なんだか、キャラ造形含めて萩尾望都の漫画ぽくて、萩尾望都が影響受けたのかな、と思わされる耽美な作風であった。サイレントではあれど、ほぼセリフが何かを語っているようで、そこに何か違和感を感じることはなかった。気まぐれかつ多情で、金にだらしのないミカエルは決して画家にとって良き存在とは言えないのだが、その存在が彼の生きる意味であり、創作のインスピレーションとなりうる、というところに人生の皮肉を感じる。ラスト含め、凄い萩尾望都やジャンコクトー感が強く、いわゆるロマン主義的な作品。好きです。
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