まだ知らぬ者

その男、凶暴につきのまだ知らぬ者のレビュー・感想・評価

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)
4.0
北野の自殺願望は、既にこの作品から窺い知ることができる。デビュー作からこれほど残虐性溢れる作品を作ることに、驚嘆の念を示さずにはいられない。先行きの見えない展開の中で、不意に残虐シーンが画面に飛び込んでくる。次に何が起こるかわからない、言うならば劇中のどこに時限爆弾が仕掛けられているか不明瞭な構成手腕を褒め称えたい。
最後の手に汗握る緊迫とした銃撃戦は、全身を身震いさせるほどのリアルさと過激さであって、映像の端々が脳裏から離れない。あの窒息しかねない殺気の迫る空気感は、全て北野の計算に裏打ちされたものである。デビュー作でこれほど念の入ったバイオレンス映画を制作した製作者の心意気には感服する。視聴者に毒を撒き、毒素によって視聴者の体が蝕まれるほどの恐ろしさをこの作品は持っている。
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