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青い青い海のあのレビュー・感想・評価

青い青い海(1935年製作の映画)
3.9
南の島に流れ着くと言われれば、真っ先に椰子の木を思い浮かべてしまうのは、太平洋に面した日本で生まれ育ったからでしょうか?

浜辺に打ち上げられた時に、イネ科の穂が見えてきて、アゼルバイジャンと分かった時、ああロシア人のいう南の島って熱帯じゃないのか、そういえばカスピ海などを除けばロシアに不凍港ってなかなかないくらいだから、暖かな海には出て行き辛いよな、とハッとさせられました。そういう意味では、ロシア人の眼差しがよく出ていて新鮮でした。

それでもなお、表情豊かな波模様が島を暖かに感じさせましたし、船上の浮遊感のあるカメラワークがスクリーンの四角を忘れさせるような夢心地がありました。

一人の女を取り合う話なのにも関わらず、戦地の婚約者をそっと受け入れて、恋を一時の夢にしてしまったからか、全く男臭さを感じさせないところも魅力的です。

少々淡白ではありますが、床に落ちた真珠が周りの人間を消し去ってしまったように、人生の夢のような一時を華麗に描き切った秀作でした。
あ