ともぞう

乳房よ永遠なれのともぞうのネタバレレビュー・内容・結末

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ダメな旦那に苦しめられ、子供2人を抱えながら離婚。短歌の才能を見出されてきたタイミングで乳癌に。左乳房を失ったにも関わらず、癌は肺にも転移。若くして亡くなる。乳房を失い、死期が迫りながらも男の愛情を求める姿に女の情念を感じた。女性にしか撮れない映画を撮ろうとした田中絹代の思いを感じる作品。

〈あらすじ〉
安西茂(織本順吉)との不幸な結婚生活に終止符をうった下城ふみ子(月丘夢路)は、2児を抱えて実家に戻った。たまたま、ふみ子とは幼友達のきぬ子(杉良子)の夫の堀卓(森雅之)が外地から引揚げて来たのを機に、北海タイムスの山上(安部徹)家では短歌の集いが催され、勧められるままに何首かを詠んだふみ子は絶讃を浴びた。その夜、見送りの途すがら、堀のかけた激励の言葉は、ふみ子の心に明るい灯をともした。ある日、仲人の杉本夫人が来て、離婚手続の済んだことを知らせたが、長男の昇だけは夫の許に帰さなければならなかった。そんなある日、堀が急病で死んだ。泣くにも泣けない気持でふみ子は堀の写真を見つめるのだった。安西家からこっそり昇をつれ戻し、親子水入いらずで東京に職を見つけようとしたふみ子は、乳癌で札幌病院に入院した。先頃「短歌時代」に新人作家の募集があった時、堀によって送られた彼女の短歌が入選し、歌壇の話題となっていることを東京日報の大月章(葉山良二)からの便りで知った山上が病院に駈けつけたのは、彼女のみずみずしい乳房が切りとられる日であった。手術後、ふみ子は元気だったが、ある日、同室の患者の新聞に自分の余命いくばくもないと記されているのを見て愕然とした。そして勝気な彼女はことさらに元気を装い、東京から来た大月に求婚したり、無暴な振舞が多かった。大月が社に呼び戻された数日後、この若き閨秀歌人の遺体も屍室に運ばれたのだった。初夏の緑が映える日、支忽湖のほとりに昇やあい子と立った大月は、ふみ子のノートを、子供たちは手にしたリラの花を湖面に投げるのだった。
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