カカポ

乳房よ永遠なれのカカポのレビュー・感想・評価

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)
3.5
プライムでの配信が終わっちゃうらしかったので見た。1955年当時に女性の映画監督が撮り、女性の脚本家が書いたというのがまず衝撃的。こんなこと軽々しく言いたくはないが、やはり女が撮るからこそ見える生々しい女の感情はあるし、だからこそ制作者には様々な人が必要なんだと思わされる。

句の才能を持ちながらも家庭の中で軽んじられ、ようやく自由を手にしても本当に欲しいものは手に入らない。ひたすら負け続けた先に待っていたのは乳がんという死への片道旅券だった。
病に冒された体は言うことを聞かず、せっかく見出された彼女の才能もこの先日の目を見ることもない。彼女の姿は不幸のどん底のように見える。
しかし、同時に彼女は病の床に伏せたことでようやく妻や母というくびきから解放され、抑圧されてきた内面をようやく表に出すことができたともいえる。いつも娘や息子の手を引いて気を張っているようだった彼女が病床で母親に甘える姿はまるで子供のよう。周囲に言われるままに結婚した男の横暴や叶わない相手への恋には聞き分けよく耐え続けていたのが、病院に見舞いに来た男にはわがままに振り回し困らせる。

作中のおよそ半分がこの病院内でのシーンに費やされ、前半の耐え忍ぶ人生から一転、後半では彼女の人間性をようやく垣間見ることができる。体の自由があると心の自由は得られず、死を目の前にせねば自分の人生を生きることも叶わない女の一生。彼女たちは一体何を思いこれを撮ったんだろうか。
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