おさかなはフィッシュ

エドワード IIのおさかなはフィッシュのレビュー・感想・評価

エドワード II(1991年製作の映画)
2.5
「デレク・ジャーマン、ええやん!」と思ったのも束の間、これは私には合わなかった…。

まず、エドワード2世って誰だ? 世界史に出てきたかな? とウィキペディアで調べてみると、「英国史上最低の王と呼ばれる」とのこと。なんて不名誉な…。

物語はすでにガヴェストンを寵愛しているところから始まる。それに至るまでの背景などは省かれているので、ただめちゃくちゃやっている奴にしか見えず、冷ややかな目で見てしまう…。

王としての責任も果たそうとせず、妻のイザベラに対する扱いもひどい。そう、このティルダ・スウィントン様が絶対零度って感じで相変わらずのお美しさなんだけれど、散々暴言を吐かれたのにもかかわらず「私にはあの方だけ」「ガヴェストンを呼び戻す役に立たねば」とか言っちゃってる。完全にモラハラ被害を受ける妻だよ…。かわいそうに…。

(それでもティルダ様の衣装チェンジは楽しくて、赤いドレスにパールのネックレス、黒い眼鏡という出で立ちで、石造りの間に吊るされた鹿を猟銃で撃つ、というマニア垂涎の大サービスシーン(?)もありました…!)

そんなこんなで、ガヴェストン殺害後のエドワード2世&デモ隊 VS イザベラ&機動隊のシーン。
エドワード2世陣営では、現代の衣装をまとった男たちが「同性愛は永遠なれ」とシュプレヒコールする。
そうか、この映画は(こういう表現が適切なのか分からないけれど)ゲイ映画で、そもそも歴史映画などのつもりは1ミリもなかったのでは…? と思い始める…。

けれども、そこで現代のデモ隊が彼らの言葉をそのままに発して主張をするなら、クリストファー・マーロウの戯曲の台詞を忠実に用い、演劇的手法をもってここまでシーンを重ねてきた意味とは…、と思ってしまう。
この映画が作られた当時のゲイは今よりもずっと厳しい境遇に置かれていたことは容易に想像がつくし、そのために極端で過激な表現が選択されることにも理解はできるけれど、映画が置き去りにされてしまっているような、さみしさを覚える…。

DVDのジャケットにもなっていたシーン。
石造りの間に、赤いドレスを着た弦楽四重奏の女たち。その手前で誰かを待つようにそわそわする、タキシードを着たエドワード2世。
同じくタキシードを着たガヴェストンがフレーム・インし、流れるように二人のダンスが始まる。こみ上げる再会の喜びのあまりか、動きはコミカル。
このシーンは楽しかったなあ。そういうシーンもあったので、全体的にはいまいちハマれなくて残念だった…。

北図書館にて鑑賞。