シンタロー

私は貝になりたいのシンタローのレビュー・感想・評価

私は貝になりたい(1959年製作の映画)
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名脚本家・橋本忍が初めて自らメガホンを取った作品。高知県の田舎町で理髪店を営む清水豊松は、貧しく平凡ながらも、妻、息子と仲良く暮らしていたが、赤紙が届き召集される。辛い軍隊生活の中、ある日捕虜の処刑を命じられるが、気の弱さゆえ、実際は負傷させただけに終わる。終戦後、復員し帰郷した豊松は、ようやく家族との平穏な生活を取り戻す。しかし、思いがけずBC級戦犯のレッテルを貼られ、逮捕された豊松は、理不尽な裁判で絞首刑の判決を受ける…。
せめて生まれ変わることができるなら…
いえ、お父さんは生まれ変わっても、もう人間なんかにゃなりとうありません…
こんなひどい目にあわされる人間なんて、もう厭だ…
牛か馬のほうがええ…いや、牛や馬ならまた人間にひどい目にあわされる…
いっそ誰も知らん深い海の底の貝…そうだ、貝がええ…
深い海の底の貝だったら…戦争もない…兵隊もない…
房江や健一のことを心配することもない…
どうしても生まれ変わらにゃならんのなら…私は貝になりたい…
本作について、自分は語ることはできません。祖父母は二度と観られないと言いました。戦争の悲惨さや愚かさではなく、家族と引き裂かれる悲劇でもなく、人間そのものを否定し、人間そのものの罪を追及したところが、ただならない問題提起なのかと思いました。
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