ボヴァリー夫人のような、恋多き女性の人生譚。
ひとりの女性を男性が三人囲んで祝っているところから、物語ははじまる。福祉の功労者として表彰された彼女のための、こじんまりしたパーティのよう。リッチな邸宅の眺めのいい書斎、そこに続くバルコニーで、年配の男女が歓談している。
男たちはかつてリディアというこの女性を愛していた者ばかりでだった。美しく健康的な彼女は、たちまち彼らを虜にした。幼馴染の医者、パーティで出会った血気盛んなスポーツマン、施設の運営に立ち会った盲目の音楽家・・・
リディアは若く甘かった自身の恋愛を振り返るなかで、ここにはいないもうひとりの男性との想い出に耽る。
ジョセフ・コットン目的で鑑賞。
彼って『幸せになれる良い奴』な役がなかなかないんですが、これもしかりでした。良い奴なんだけど報われない。
他の男たちは見切ってリディアのもとを離れるのですが、独身を貫いて彼女をかたくなに愛し続けた男はジョセフ・コットンのみでした。
たぶん、私が今鑑賞し得るジョセフ・コットン出演作のなかで、市民ケーンに継いで若い彼を鑑賞できる。若い時の彼はほんとに甘いマスク。あんまり顔変わらないけど、やっぱりつやつやの時の彼が好き。
オーソン・ウェルズの『偉大なるアンバーソン家の人々』は若いけどあまりアップにならないし、ヒッチの『疑惑の影』はかっこいいけどアンチヒーロー。
ああ、できれば若かりしコットンのメロドラマが観たかったな〜。
ということで、恋愛映画を観られると思ってこれを借りた私は少し期待外れでした。ちなみにGEOの宅配レンタルです。
とか思いながら、なんとなーく呑気に観てたんですが、ラストのオチ、良かったですな。得てして男女の恋愛なんてそんなもんだし、すっきりしているのか、不完全燃焼なのか、なんとも言えないこの苦虫を潰したような感じとても好き。ラストのラストでリディアがとても愛おしくなる。