ブタブタ

モレク神のブタブタのレビュー・感想・評価

モレク神(1999年製作の映画)
4.0
ナチス第三帝国の崩壊が迫る中、ドイツとオーストリアの国境付近にあるヒトラーの山荘「イーグルネスト」でのヒトラーと恋人(「愛人」て表記が多いけどヒトラーは独身なので恋人でいいと思う)エヴァ、ゲッベルスや取り巻き達との夢とも現実ともつかない日々のお話し。
露出過多で靄がかかった様な世界。
現実逃避し幻想の世界に浸ってるヒトラーの心象風景なのか。
『最期の12日間』よりも更にこのヒトラーは人間的、と言うより只のオッサンであり嘗て存在した神、カリスマ、恐るべき魔王であった『ヒトラー』の残りカスでしかなく本人もそれが分かっていて必死に総統の仮面を被っている様な、周りもそれに合わせて必死に取り繕う事しか出来ない、滑稽なコントで悲劇で喜劇、茶番が延々と続いてる。
これと似た映画を見た気がしたんですけどアレだった。
香取慎吾主演の『座頭市ザ・ラスト』に出てくる仲代達矢演じるヤクザの大親分。
言うまでもなく底抜けボンクラ映画で、恐らくは仲代達矢のあさっての方向のアドリブ演技は監督が役者(仲代達矢)をコントロール出来ないからこういう酷い事になると誰かが書いてましたが。
ヤクザの大親分の筈なのに「俺は餡子が食いたい」とか勝手なセリフばかり言うので周りも面倒くさくて「ハイハイ」みたいな感じになっててボケたおじいちゃんを優しく見守ってるみたいな。
これもボケた独裁者であるヒトラーを皆で優しく「ハイハイ」と見守ってる奇妙な世界。
全てが面倒くさくてただ時が過ぎるのを待ってる様な厭世感と絶望的が漂う。
もうほっといてくれとばかりに山荘に籠るヒトラーの姿は滑稽で身勝手で、途方も無く愚かしく無様。
だからこそヒトラーは最悪のアイコンとしてこれからもあらゆる映画に登場して無様な姿を晒し永遠にフィルムの中で終わらない地獄を生きるべき。
ブタブタ

ブタブタ