Rick

タレンタイム〜優しい歌のRickのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.0
 誰しもが喪失や痛み、悲しみや苦しみを抱えて生きている。貧富の差や民族、宗教の違いは確かに厳然と目の前に広がっている。でも偏見によるラベリングだけで相手を見ようとせず、友情や愛情を育む機会さえも奪ってしまう。種類は違えど哀しみを抱える者同士、相手を慮って、手を取り抱き合う可能性すらも排除してしまうのは、それこそが悲劇に他ならない。それぞれが胸に秘めているその哀しみをパフォーマンスの中で表現し、聴衆がそこに想いを馳せる。それだけでも、他者を知る糸口にはなるはずだ。
 浅学にして、初めてマレーシアの風土について知った。大別してマレー系、インド系、華人系からなる多民族国家であること、その中でもイスラム教、ヒンドゥー教など宗教的な要素やマレーシア語、タミル語、英語などの言語が複雑に絡み合っていること。そして民族間でも経済格差があること。これらは長い歴史を通して培われてきたもので、そこに住む人にとっては中々覆すことのできない前提となる。だからこそ、若者たちがその中で互いに歩み寄ろうとする姿に胸打たれるのかもしれない。
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