うえびん

タレンタイム〜優しい歌のうえびんのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
3.5
人種のるつぼ

2009年 マレーシア作品

冒頭、ドビュッシーの「月の光」のBGMに高校の校舎を淡々と映す画から、静かな作品を想像するが…。

マレーシア映画は初めてだったので、学校や街の風景が新鮮だった。また、隣国のインドネシアとは違う多民族国家であることを初めて知った。マレーシア語を使うマレー人、中国語を使う中国系の人、タミール語を使うインド系の人、異民族間の公用語は英語を使うこと。イスラム教が国教であること。

物語は、高校生のマヘシュ、ムルー、ハフィズとその家族を中心に展開する。舞台は、彼らが通う高校での音楽イベント「TALEN TIME(学生の芸能コンテスト)」。英語のポップス、フォークソング、中国の民族楽器「二胡」の演奏、インド舞踊、学校でも生徒たちの背景が多様であることを知った。様々な音楽をBGMに物語が展開していくのが面白かった。

耳の聞こえないマヘシュ、家族の姉と母と叔父。ピアノで弾き語る詩人ムルー、家族の父母と2人の妹とメイド。ギターを弾き語るハフィズ、家族で闘病中の母。家族のキャラクターも濃くて生徒たちと同じくらい強く印象に残った。また、高校の先生たち、公園で突然現れるオムツを着けた赤ちゃんたち、とにかく登場人物の個性が強い。

マヘシュの叔父、ハフィズの母に起こる不幸。ムルーの家族の下ネタのオンパレード。3人と家族に起こるエピソードもひじょうに濃ゆい。

いろんな場面が印象には残ったけれど、多民族、キャラクターの強さ、エピソードの濃さ、いろんな要素がありすぎて、最後まで焦点を合わせることが難しかった。インド映画のような歌や音楽に乗せた場面展開、日本映画のような静かな情景描写、アメリカ映画のようなコメディタッチ…。マレーシアの一国の多民族性と同じように、一つの作品にたくさんの作風が詰め込まれた作品でした。
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