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タレンタイム〜優しい歌のmiiのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.0
学校で開催される音楽コンクールに出場する事になった高校生のムルーは
比較的裕福な家庭で育てられている。

出場する生徒の送迎係として立候補したマヘシュがムルーの担当。

他に出場する者がハフィズとカーホウ。

皆学校生活の外では 家庭に様々な問題がある。
宗教問題や貧富の差 親の愛情が貰えない者など
悩みを抱えながら 学校生活を送っている。

マヘシュは聴覚障害だが ムルーと彼の間には恋が生まれて
一緒に時を過ごすようになる。
「君を決して傷つけないと約束したら
ずっと僕のそばにいてくれる?」
濁りのない純粋な愛を感じる告白の言葉ですね。

この物語で はっとさせられる所が
辛い思いをしている者と 事情を何も知らないで接する者が
すぐ隣り合わせで共存している事。

ハフィズの叔父の結婚式で賑やかな時に
隣の家ではお葬式の最中であったなど
世の中にはそのようなすれ違いが多々あるのだろう。

多くの民族や宗教 言葉が交わされるマレーシアでは
彼らを配慮する心 気遣う心 優しさが必要なのだと
高校生たちの青春群像劇を通して伝わってくる。
もちろん それは多民族国家でない私たちの日常にも言えるわけで。

コンクールでハフィズの悲しみに寄り添うように奏でるカーホウの二胡。
2人のアンサンブルが なんと美しい事か!
言葉を交わさなくとも 音色と抱擁でこの作品が言わんとしている事が分かるこのエンディングは
涙なしには見られない 素晴らしい若者の姿でした。
様々な難しい問題を 「黙して語らず」の美学で昇華させた 秀逸なラストだと思います。
mii

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