こなつ

マッチ工場の少女のこなつのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
4.0
アキ・カウリスマキ監督「労働者三部作」の3作目。昨年末から追いかけているアキ・カウリスマキの「敗者三部作」「労働者三部作」をこれで全て鑑賞したことになる。カウリスマキ監督作品を堪能した。

先日観た「夕暮れのパラダイス」でも感じたのだが、20歳代の若いカティ・オウティネンは頬がふっくらとしてポニーテールが良く似合い、相変わらずの仏頂面だが可愛い。少し歳を取った「敗者三部作」では頬が痩けていて面長だ。顔の印象は違うのだが、カウリスマキの作品の中での彼女は、歳を重ねてもずっと無愛想で無表情。そういう演技が魅力的でハマってしまった。

田舎町のマッチ工場で働く少女イリス(カティ・オウティネン)は、安い給料で母と義父を養っていた。遊びたい盛りなのに、洋服を買うことも許されない。やっと出会った男性には妊娠させられた挙句、捨てられた。自分の不運を恨むあまり、彼女が取った行動に救いはない。それでも悪びれた様子を見せず、淡々と連行される彼女の後ろ姿にカウリスマキはどんなメッセージを込めているのか、、、

冒頭マッチ工場でマッチが箱に詰められるまでの機械処理の丁寧な工程映像が流れる。マッチってこうやって出来るんだ。イリスは検品係という単純な仕事をしていた。人生に何の楽しみもない薄幸の娘、報われなさ過ぎる人生をただ受け入れるだけで終わりにしたくなかったのかもしれないラストへの流れ。

テレビで流れる「天安門事件」「イランのホメイニ師の死亡」などのニュース。新作「枯れ葉」同様、時代背景がわかる。新作「枯れ葉」はこの「労働者三部作」の4作目という位置づけらしいが、個人的には1作目の「夕暮れのパラダイス」が一番近い作品に感じた。
こなつ

こなつ