カウリスマキを観直そうシリーズ其の九
一言でいうと、カティが笑った!カティが泣いてる!と「クララが立った!」レベルの奇跡が観られる映画。
という楽しみ方も出来るけど、やっぱりこれは「そんなやつおらへんやろ」と思いながら観ているうちにだんだん「そんなやつおらへ…あぁコレわたしのことか」ってなって落ち込む映画でもある。
戦車の前にひとりで立ちはだかった青年のように、このクソみたいな世界に中指を立ててわたしを不幸にするものすべてに復讐しても、残るものは無音のエンドロール。
今よりも少しだけ幸せになりたかっただけなのに、愛されたかっただけなのに、劇中あれだけ雄弁に感情を語っていた音楽すら流れない人生が待っていると思うと、彼女が解放されたとは思えなくて、わたしにとってはやっぱり辛い映画だ。