半兵衛

偉大なるアンバーソン家の人々の半兵衛のレビュー・感想・評価

4.2
自信作『市民ケーン』をモデルとなった人物たちのバッシングで映画監督としてのプライドを完膚なきまでに叩き潰されたにも関わらず、次回作として製作したこの作品でモンタージュを使わないなどスタイルを変えてもレベルの高い作品に仕上げているオーソン・ウェルズの才気に舌を巻く。普通ならあんな出来事があれば縮こまった出来になりそうなのに、そうならないのはウェルズにはもっと面白いものが自分には作れるという自信とそれに見合う実力が漲っていたということか。

役者のお芝居とシンクロした流麗な長回しの美しさもさることながら、普通の白黒映画より深い陰影の付け方が19世紀から20世紀という激動の時代のなかで没落した一族のドラマをノスタルジックに表現しており圧巻。

製作会社の意向による短縮の影響からか後半駆け足気味になりストーリーに深みが無くなってくるのが惜しいし、会社側の命令で作られた強引なハッピーエンドが変な余韻を残していくもののそれでも十分見ごたえのある傑作として仕上がっている。

それにしても本作のジョセフ・コットンの演技はオーソン・ウェルズが憑依しているとしか思えないが、友人だからこそこうした芸当が出来たと言えるのかも。

アカデミー助演賞に四回も候補として選ばれた実力派女優アグネス・ムーアヘッド(『奥さまは魔女』のエンドラで有名)の嫉妬により狂っていくシェークスピア的な演技も素晴らしい。
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