ともぞう

東京物語のともぞうのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.4
紀子3部作の第3作。家族の抱える問題は今も昔も変わらないんだと思わされる。ぞんざいに扱われながら「わしらは幸せよのう」というお父さんとお母さんの言葉が胸に沁みる。また、昭和20年代は尾道から東京まで電車で20数時間かかってたことも知り、改めて新幹線って凄いなと思う。

〈あらすじ〉
広島県の尾道に暮らす周吉(笠智衆)と妻のとみ(東山千栄子)は、小学校教師をしている次女の京子(香川京子)に留守を頼み、東京にでかける。ふたりは下町で小さな医院を開業している長男の幸一(山村聡)の家に泊めてもらうが、東京見物に出ようとしたところで急患が入り、結局でかけることができない。その後、やはり下町で美容院を営む志げ(杉村春子)の家に移るが、志げも夫(中村伸郎)も忙しく、両親はどこにも出かけられぬまま二階で無為に過ごしている。志げは、戦死した次男の妻の紀子(原節子)に一日両親の面倒を見てくれるよう頼む。紀子はわざわざ仕事を休んでふたりを東京の観光名所に連れて行き、夜は彼女の小さなアパートで精一杯のもてなしをする。幸一と志げは金を出し合って両親を熱海に送り出す。しかし志げの選んだ旅館は品のない安宿で、夜遅くまで他の客が騒いでいるため二人は眠ることができない。翌日、二人は尾道に帰ることに決め、予定を切り上げていったん志げの家に戻る。ところが志げは、今夜は同業者の集まりがあるのでもっと熱海でゆっくりしてきてほしかったと迷惑そうな態度を取る。ふたりは「とうとう宿なしになってしもうた」と言いながら今夜泊まるところを思案し、狭い紀子のアパートにはとみだけが行くことにする。紀子ととみは親しく語り合い、紀子の優しさにとみは涙をこぼす。一方周吉は尾道で親しくしていた服部(十朱久雄)を訪ねるが、服部は家に泊めることはできないから外で飲もうと言い、やはり尾道で親しかった沼田(東野英治郎)にも声をかけて三人で酒を酌み交わす。結局周吉はしたたかに酔い、深夜になってから沼田とともに志げの家に帰ると、ふたりとも美容室の椅子で眠り込んでしまう。志げは夫に対して父への文句をぶちまける。翌日、皆に見送られて帰路の列車に乗ったふたりだったが、とみが体調を崩し、大阪で途中下車して三男の敬三(大坂志郎)の家に泊めてもらう。回復したとみと周吉は、子供たちが優しくなかったことを嘆きながらも、自分たちの人生はいいものだったと語りあう。2人が尾道に帰ってまもなく、母が危篤だという電報が届き、三人の子供たちと紀子は尾道にかけつけるが、とみは意識を回復しないまま死んでしまう。とみの葬儀が終わった後、三人は紀子を残してさっさと帰って行ってしまい、京子は憤慨するが、紀子は義兄姉をかばい、若い京子を静かに諭す。紀子が東京に帰る日、周吉は紀子の優しさに感謝を表し、早く再婚して幸せになってくれと伝えて、妻の形見の時計を渡す。紀子は声をあげて泣く。翌朝、がらんとした部屋で一人、周吉は静かな尾道の海を眺めるのだった。
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