監督:鈴木則文、脚本:高田宏治、音楽:菊池俊輔、そして多羅尾伴内:小林旭、八代亜紀、夏樹陽子、竹井みどり、天津敏、成田三樹夫、江木俊夫など、実に東映らしい(今から見ると)マニアックなスタッフとキャストだ。
主演の小林旭は今作では七変化を楽しそうに演じ分けている。多羅尾伴内お約束の「ある時は片目の運転手、ある時は流しの歌い手、またある時は手品好きのキザな紳士、ある時は白バイの警官、そしてまたある時は怪人せむし男、またある時は私立探偵、多羅尾伴内、しかして、その実体は! 正義と真実の人! 藤村大造!」の名セリフもバッチリ決まっている。ちょっとデブだけどね。
鈴木則文監督は『トラック野郎シリーズ』、『徳川セックス禁止令 色情大名』などの怪作を連発していただけあって、今作を見事なミステリー活劇に仕上げている。高田宏治の脚本もクライマックスまで犯人キツネ男の正体はわからない凝りようだ(1955年の東映作品『多羅尾伴内シリーズ 隼の魔王』が原作らしいけど)。
でも低予算なのか、映画のスケール感はまったく感じられず、TVスペシャルレベルだ。大がかりなセットも遠方のロケなどもない。グロはアイドル歌手の宙吊り胴体真っ二つ、親子轢き殺し、鉈で夏樹陽子の頭部かち割りくらい。お色気は成田三樹夫と夏樹陽子の絡みがほんの少しあるだけ。TVの土曜ワイド劇場の『江戸川乱歩の美女シリーズ』よりも過激度は低い。ひょっとしたら金をかけなくても小林旭で客を呼べると言う計算だったのかな?
いちおう面白いことは面白いので、鈴木則文監督や小林旭のファンなら観て損はないだろう。