アラサーちゃん

セールスマンの死のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

セールスマンの死(1951年製作の映画)
3.5
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〖セールスマンの死〗
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Q. 誰がセールスマンを死に追いやったか。

A. 他の誰でもない、セールスマン自身である。
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確執のある息子や、きにさわる隣人など、周囲のストレスが彼を押し潰しているように見えて、実際、息子のトラウマの原因も、隣人と不仲という思い込みも、彼が生み出したに過ぎない。結局、セールスマンは自身で破滅に向かうためのはしごを掛け、破滅までの階段を上って追い込まれ、破滅へと飛び込む決心をしたんだろう。

長年遠方のセールスマンを勤めてきたウィリーは63歳になり、終わらないローン、芳しくない営業成績、自分より年の若い上司、ならず者の息子たちの気苦労がたたり、しだいに妄想症状が現れ始める。

彼の妄想に登場するのは、輝かしき家族の風景があった頃の息子たちや、自分を置いて海外で事業に成功した実兄。
帰りたくても帰れない、息子との美しい思い出と、頑丈で冷淡な兄とのやり直したい思い出の繰り返しの中で、しだいに彼の妄想は、ボストンで出張があったある日、突然息子ビフが訪問してきた出来事に収束していく。

あの日を境にフットボールの花形選手だった長男が、家族に顔を背けて低俗な暮らしをするようになっていった。
セールスマンはそれが許せない。果たして何が起こったのか。セールスマンの目の前には、その日の景色が広がる…
そして、結末。あの寂しい画面のなかで、優しい妻がつぶやく一言にグッとくる。

元々名前は知っていたけど、今年の夏前に〖セールスマン〗を観てこれは観ないとなと思ってた作品。
どこがリンクしているのかと思えば、あの作品の後半の素晴らしかったこと、あの人間臭さを結集したような嗄れた哀愁、悲哀がそこにあったな。
そう思えば、〖セールスマン〗よりもアル・パチーノ、ジャック・レモンの〖摩天楼を夢みて〗のほうがだいぶ近い感覚で観れる気がします。〖摩天楼を夢みて〗はとにかくすごく好きな作品なので、あれを観た時の心苦しさを彷彿とさせてくれました。

自分より幾分も若い上司に、出張業務ではなく本社勤務にしてほしいと申し出る。上司は先代の息子であり名付け子でもありながら、セールスマンに対する敬意は全くなく、申し出を受けるどころかクビを宣告する。彼はデスクの上に置かれた最新型の録音機に夢中だ、流れるのは、彼の息子たちの楽しげで騒がしくはしゃぐ声…
ジャック・レモンとケビン・スペイシーの対峙が脳裏をかすめました。