ピッツア橋本

戦場のメリークリスマスのピッツア橋本のレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.3
"ファーザークリスマス"

デヴィッドボウイ、坂本龍一、ビートたけしの共演による
第二次世界大戦中のジャワ島での日本軍とその捕虜となった英国兵たちの人間ドラマ。

かの有名な本作のテーマ曲と、世界的知名度を誇る三者の共演が有名ではあるが、大島渚監督だけあって話の重さと妖しい色気を内包している。

デヴィッドボウイの爽やかな叛逆性に内心惹かれてしまっているアイシャドーの坂本龍一。そして、その仲介役としてやんちゃ系ビートたけしの童顔と、なんだか安倍晋三的な日本語通訳イギリス兵のトムコンティが織りなす人間模様がとても不思議なバランス。

軍人としての対立は表向き。しかしこの極限状況の中で、どこか互いのユーモアを捻り出し、歩み寄ろうとするけれども立場が許さない歯痒さ。

クライマックスのデヴィッドボウイの美しさと悲哀が脳裏に焼き付く。
本作は決して彼のタレント映画じゃなくて、表現者として呼ばれ、演技したのだなあと感心した。

ざっくり言って全体的に演技は下手ウマ感が先行。
ただ各自の素材が図抜けているので、立っているだけで絵になる。

時系列的にも本作でたけしは映画作りに目覚めたきっかけなんじゃ無いかな?
何かサナギが孵化する前のような無垢な輝きを感じずにはいられない。

腹切のシーンとかは我々日本人が観ても何だか時代錯誤の残酷さを感じるはず。
やっぱり戦争は倫理を歪ませる。

その内なる哀しさをじんわり描いた本作はキャラクターの輝きに負けず劣らず、強烈なメッセージ性があるストーリーだ。それでも爽やかさな後味を残させる叛逆の巨匠、大島渚に乾杯!
ピッツア橋本

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