nt708

ノッティングヒルの恋人のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

のちに『About Time』で脚本・監督を務めるリチャード・カーティスが脚本、ロジャー・ミッシェルが監督の名作。誰もが一度は夢見る恋愛をありのままに描きながら、その恋愛にかかわる人々の人生模様も描いてしまうから、登場人物の中に少なくともひとりは共感できる人物がいるように作られている。このように話の本筋よりもディテールへのこだわりが比較的強いことはロジャー・ミッシェルの特徴のひとつなのかもしれない。

「私は女優である前にひとりの少女である」という台詞は今でこそありふれているが、本作の中で最も印象的な台詞でもある。私も一応、舞台や映画を仕事としてきたから役者がいかに強くて弱い存在か理解しているつもりだ。そのときどきで常にアイデンティティが揺らいでおり、ときに自分というものを見失いそうになる。あるいは、この特徴は人間であれば誰もが直面する問題なのかもしれないが、いずれにせよそのような状態の彼女がひとりの男性に対して「愛してほしい」と言うことがいかに勇気のいることだったか、、

言葉にすれば驚くほど当たり前のことで、自分でもここまで書いてきて馬鹿馬鹿しくなってきたが、そんな単純なことでも一歩踏み出せないのが人間の情けなさであり、いとおしさなのだろう。そんなことを思わせてくれる本作はやはり歴史に残る名作のひとつなのだとつくづく感じた。
nt708

nt708