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魔女の宅急便のしゃにむのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.8
「魔女の血。絵描きの血。パン職人の血。神さまがくれた力なんだよね。おかげで苦労するけどさ…」

<マッチョの宅急便>
あったらいいな…マッチョの宅急便。

例によって自分はスタジオモグリゆえに最後まで観たのは今回が初めてでした。耳をすませば2人の名探偵が目に浮かびます。バーローも可愛い声出せるじゃないか(ニヤリ)

「素直さ」と「明るさ」の2点セットを兼ね備えた典型的なジブリガールが独り立ちを目指して奮闘する元気ハツラツゥお仕事ムービーかと思いきや、新たな出発と自分を見つめ直す再出発へと背中を押してくれる前向きなメッセージが詰まった作品でした。精神的にマッチョになるお話だな(筋肉式結論)

あらすじ↓
てめぇらの血は何色だー‼︎ (血筋の自覚)

・早い独り立ち
→ 魔法使いというとハリポタの世界観が頭に叩き込まれているので設定が新鮮でした。この世界の魔女は13歳で独立、親元を離れてどこかの町に住み着くのがしきたりです。まだ中学も卒業してない歳です。現代の感覚からするとめちゃめちゃハードな試練です。宿を取るにも未成年だから面倒だし、飛んでると警官に職質され、仕事も見つけにくい。甘えて親元にも帰るに帰れません。13歳の女の子が世間を大人と同じように渡り歩くのは尋常じゃないことですよ。キキのタフネスには頭が上がりません…皿洗いします。

・ニシンとカボチャの包み焼き
→ このシーンはだいぶショックです。優しいおばあちゃんに心が温まった後に冷たい雨と冷たい言葉に心も冷えてしまいます。キキの心中は痛いほど察せられます。お金を稼ぐということは綺麗事では済みません。嫌な仕事でも引き受けて、嫌々でも頭を下げて、社会と折り合いをつけていく。大人の一員として世の中で生きていく者への苦い洗礼です。だけど、おばあちゃんみたいな温かい人もいるからまんざら嫌でもないです。

・憎いメガネ
→ 陰キャライメージがまとわりつくメガネキャラの中でもトンボは異例です。男女問わず侍らせて車を走らせるちょっと不良。かと思いきや素直で爽やかボーイ。今を飛び切りエンジョイしてる若者って感じです。対してキキは地味な(似合うけど)魔女の黒い服を着て仕事と修行に追われる毎日。新たな環境に身を置いて、居場所を獲得しようと、さらに自分を高めようと、勤勉に努力する毎日を送っているとパンクしそうになりますよ。トンボはいいヤツだけど憎い。自由を楽しむ同世代を目の当たりにするとふっと自分は何なんだと自棄になりたくもなりますヨ。

・飛べない魔女はただの女の子
→ 飛ぶことが取り柄のキキは魔力が弱まり取り柄を失ってしまいスランプに。森に住む若い画家の女の子に悩みを打ち明けます。彼女もかつてスランプに陥りました。新しい場所で頑張ろうと張り切ると知らず知らの内に無理をしてパンクしちゃいます。そんな時は足掻くしかない。もしくは何もやらない。時間だけが自分を助けてくれます。

→ この画家の女の子との出会いがキキの覚醒を促すことになりました。魔女の血は親から引き継いだものです。キキは無意識の内に魔女の特別な力を手に入れました。が、魔女という自覚は無かった。自分が魔女だと自覚する前に力を手に入れたからです。このスランプは結果的にキキが自分を魔女だと自覚するいい機会になりました。スランプは自分を見つめなおすための時間なのかもしれない。自分には何の血が流れているだろう?

マッチョの宅急便だったらニシンとカボチャの包み焼きもホカホカですね。しかし彼らが届けるものは物騒なものばかりです(弾丸、爆弾、鉄拳、鉄パイプ…etc)太っちょの宅急便なら…たぶん食べちゃいますね。

追記 来月まで試験なのでほそぼそレビューの宅急便になる予定です(ハゲそう)
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