クシーくん

泥棒成金のクシーくんのレビュー・感想・評価

泥棒成金(1954年製作の映画)
3.1
ヒッチコックにしては珍しく面白くない作品の一つ。リヴィエラの街並み、完璧な横顔のグレイス・ケリー、そして衣装の美しさを加味しても評価し難い凡作である。

本作は言うなればリゾートムービーのようなもので、美しい南仏を舞台に日焼けしすぎハンサムのグラントと金髪碧眼美女のケリーが高級外車をぶっ飛ばしてイチャイチャしてればそれで観客は満足というタイプなのだ。ミステリーやクライムは飽くまでバカンスに観客を誘う、ちょっとしたスパイスに過ぎない。その割にはミステリーのシーンが大部を占めるので実に中途半端で、これが私の中で評価を落とした根本的な原因に思う。

黒幕はすぐに分かるのに真犯人の正体を明かすのにダラダラと間延びさせる脚本の段取りの悪さ。どんでん返しなどなくても十分なのだが、ヒッチコックの作劇法的にそれは許されないのだろうか。

良くない所ばかり挙げてしまったが、美しいリゾート地でのロマンスとしてはなかなか見ごたえがある。どうも監督の初ワイドスクリーン作品らしく、カーチェイスでリヴィエラの眩いばかりの遠景をこれでもかと見せつける。終盤の仮装舞踏会でも奥行のある映像が作品に活きていた。
アメリカの夜が多用されているが、花火の夜をグリーンに染める洒落たアイディアもヒッチコックならではの白眉。

ロリコン趣味を詰られるケーリーグラントだが、言うてグレイス・ケリーとも25も歳が離れている。この頃のハリウッドはとにかく年の離れたイケおじと小娘が結ばれる恋愛映画が多いが、まあ観客の願望を反映した結果かもしれない。
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