矢嶋

ブルークリスマスの矢嶋のレビュー・感想・評価

ブルークリスマス(1978年製作の映画)
3.7
SFというものは、どこかで嘘をつき、その嘘に基づいてリアルを描くものだと思う。UFOを見て血が青くなるというのはいかにも荒唐無稽だが、それをふまえた人々の反応が主軸となる。

事態を隠蔽しようと圧力をかけたり情報統制する政府の姿は、大人向けドラマの魅力に溢れていた。南が謎に迫っていく一連の流れはスリルがありとてもいい。
政府が最終的には拉致や殺害等といった非人道的行為にまで至り、おぞましさや怖さが存分に感じられる。ラストの悲劇的な展開といい、ストーリーの大筋は結構魅力的だと思う。また、情報に踊らされる民衆の愚かさも描かれる。

居酒屋の二階で酒を飲み情報交換をするシーンは、狭い家屋と窓の外のネオンが非常に印象的なカットだった。ラストの血が混じるシーンも含め、画作りのセンスは随所に感じられる。

Charの主題歌を筆頭に音楽もよく、ドラッグパーティーやクラブ?で流れている曲や宗教っぽい曲、スチールパンを使った不穏な曲等、魅力的な劇伴が多い。

このように魅力が多いだけに、細部が粗いのがもったいない。体制批判が最初から前提されているのか、政府を極端に悪く描いている。政府を信用する/しないを問わず、ああした行動に出るにはもっと上手くやる必要があるだろう。
主人公が二人体制なのも意図が分からず、髪型も似てるので無駄に混乱した。別視点の主人公が最後に交わるわけでもなく、端的に不可解な要素だった。
矢嶋

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